日本特殊陶業がポーランドでSOECを用いた水電解装置の実証/開発:製造マネジメントニュース
日本特殊陶業は、ポーランドの研究機関や企業と、固体酸化物形電解セル(SOEC)を用いた水電解装置の実証と産業スケール向けシステムの開発に関する覚書(MOU)を締結した。2026年初頭に実証機の稼働を開始する。
日本特殊陶業は2025年9月10日、ポーランドのLukasiewicz Research Network New Chemical Syntheses Institute(L-INS)、Hynfra、Rockfin、同国の化学メーカーを含む5者で、グリーンアンモニア合成向けの固体酸化物形電解セル(SOEC)を用いた水電解装置の実証と産業スケール向けシステムの開発について覚書(MOU)を締結したと発表した。
セラミック技術を利用するSOECは、プロセスで生じる廃熱を利用できる環境で高効率に水素を製造できる。今回の合意に沿って、L-INSの実証施設に小規模SOEC装置を設置し、2026年初頭に稼働を開始する。実証機は工場の実際のインフラを利用し、SOECによる水素製造とハーバーボッシュ法によるアンモニア合成を組み合わせる技術の成立性を検証する。
さらに、産業スケールでのSOEC量産モデルの共同開発も進めていく。この取り組みを通じて生産される高純度水素を、ポーランドの主要産業であるアンモニアや肥料の生産プロセスで直接使用する。初期目標としては、年間数十万トン規模のアンモニアを生産する工場に水素を供給することを掲げている。従来の化石由来の水素を再生可能エネルギー由来の水素に置き換えることで、CO2の排出量削減を図る考えだ。
参加企業の役割としては、Hynfraがプロジェクト全体の管理と政府との折衝を担い、Rockfinは水電解システムの設計と設備製造を担当する。L-INSはアンモニア製造プロセスの開発と最適化の知見、実証設備を提供し、日本特殊陶業はSOECの製品開発と製造を担う。
今回の取り組みは、ポーランドの2030年脱炭素目標に貢献するとともに、化学工業や鉄鋼業などの水素需要の大きい産業に向けて、SOECの実証を加速させる狙いがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
サマリウム-鉄-窒素永久磁石の高密度化技術、焼結密度を最大8%向上
日本特殊陶業と産業技術総合研究所(産総研)は、新規焼結助剤を活用しサマリウム-鉄-窒素系焼結磁石を高密度化および高性能化できる技術を開発した。ハイパワーと大容量を実現した、“かゆい所に手が届く”Liイオンキャパシター
日本特殊陶業は、2026年のリリースを目指して、ハイパワーで大容量のリチウムイオンキャパシターの開発を進めている。日本特殊陶業、SCSKと中長期的なIT変革に向け合弁会社設立
SCSKと日本特殊陶業は、日本特殊陶業の中長期的なIT運営の変革などを目的とした合弁会社を設立した。SCSKはIT変革パートナーとして、日本特殊陶業のIT運営力の向上やIT人材育成の強化を図る。ドローンで自動車整備工場に部品を配送 日本特殊陶業が実証実験
日本特殊陶業は、フタバ、TOMPLAと共同で、ドローンで自動車整備工場へ部品を配送する実証実験を実施した。部品商から複数の整備工場へ配送する想定で、正常系/異常系シナリオの双方で検証を行い各種データを取得した。日本特殊陶業が1800億円の大型買収、デンソーのスパークプラグと排気センサー事業
日本特殊陶業は、デンソーのスパークプラグ事業と排気センサー(酸素センサーと空燃比センサー)を買収すると発表した。買収金額は1806億円。