日本特殊陶業が1800億円の大型買収、デンソーのスパークプラグと排気センサー事業:製造マネジメントニュース
日本特殊陶業は、デンソーのスパークプラグ事業と排気センサー(酸素センサーと空燃比センサー)を買収すると発表した。買収金額は1806億円。
日本特殊陶業は2025年9月1日、デンソーのスパークプラグ事業と排気センサー(酸素センサーと空燃比センサー)を買収すると発表した。買収金額は1806億円。
今回日本特殊陶業がデンソーから買収するのは、同社の子会社を含めたスパークプラグと排気センサーの国内外における開発、製造、販売に関わる事業だ。買収対象事業の2024年度(2025年3月期)の売上高は1918億1900万円。2025年3月末時点の資産合計は698億5100万円、負債合計は313億1700万円。ただし、今回の買収ではデンソーと子会社の役員、従業員、土地および建物は譲受対象外となる。上記の資産と負債には譲受対象外のものが含まれている。
買収は現金決済で行われる。前提条件となる国内外の競争法当局の認可を待つ必要があるため、事業譲受の実行日は未定となっている。ただし、買収金額の価格算定基準日は2026年3月31日となっており、2025年度内の事業譲受の完了を目指しているとみられる。
両社は2023年7月、内燃機関製品におけるセラミック製品の一部事業譲渡の検討を開始することを発表。そこから両社は、スパークプラグおよび排気センサーの技術/品質へのこだわりなどの価値観を共有しながら、多岐にわたる検討と協議を重ねた結果、今回の事業譲渡の合意に至ったという。
日本特殊陶業は、同社のコア技術であるセラミックの開発および製造技術を生かし、内燃機関製品の供給責任を果たすことでカーボンニュートラルの過程に貢献することを目指す。また、販路や生産体制の融合によって業界全体で最適な生産体制を構築することで、グローバルでの安定供給を実現するとともに事業基盤を強化する狙いもある。
日本特殊陶業の2024年度連結業績の売上高は6529億円。セグメント別ではプラグが3616億円、センサーが1772億円を稼ぎ出している。今回買収した事業は、スパークプラグ事業がプラグに、排気センサーがセンサーに組み込まれることになる。また、今回の買収金額である1806億円は年間売上高の3割弱に当たり、同社にとって大型買収となる。
一方のデンソーは、事業売却によって得た資金などのリソースを、これから本格的な普及が見込まれる電動化領域や水素などのクリーンエネルギー領域に最大限活用していく方針である。
デンソーのスパークプラグ事業は、1955年にボッシュ(Robert Bosch)との技術援助契約を基に開発し、1959年に発売した「P2プラグ」から始まる。その後も、ワイドUプラグや白金プラグ、ZUプラグ、イリジウムプラグなど世界初とする製品を投入し、2018年に生産累計60億本を達成している。
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