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さらばディストリビューター、点火タイミングは電子制御で最適化する時代にいまさら聞けない 電装部品入門(8)(1/3 ページ)

点火装置の代表的な構成部品のうち、シリンダー内での点火を最適なタイミングで行うのに用いられてきたのがディストリビューターである。このディストリビューターに加えて、現在主流になっている電子制御式の点火装置についても説明する。

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いまさら聞けない 電装部品入門

 前回の記事で、イグニッションコイルによってバッテリー電圧を昇圧できるメカニズムは何となくご理解いただけたと思います。

 しかし、そもそも一次電圧を遮断する手段や二次電圧を最適なタイミングで放電に導く手段はどうなっているのでしょうか?

 その役割を一手に引き受けているのがディストリビューターです。


ディストリビューターの外観
ディストリビューターの外観

点火タイミングは上死点前

 ディストリビューターは、カムシャフトと連結しており、カムシャフトの動力によってディストリビューター内部のローターが回転します。

 カムシャフトの回転状態はピストン位置と同期していますので、ディストリビューターのローターの回転状態を機械的(ポイント接点)または位置検出センサーで把握して一次電流を遮断します。

 そこで生じた高電圧は、ローター先端にある配電部とディストリビューターキャップ内側に設けられている側方電極とが向かい合った瞬間に放電されます。

側方電極(左)とローター先端(クリックで拡大)

 最終的にスパークプラグによって点火された混合気が燃焼し、火炎伝播が行き渡って最大圧力に達するまでには一定の時間が必要になります。

 その最大圧力に達するタイミングは、ピストンが上死点を過ぎてから約10度付近が最適といわれており、そのピストン位置に合わせて点火タイミングを逆算する必要があります。

 ピストンスピードは極めて速いので、仮に上死点後10度の位置で最大圧力にしようと思うと、点火タイミングは上死点前となります。

 ただし、ピストンスピードはエンジン回転数に同期して変化しますので、実際のエンジン回転状況によって最適な点火タイミングというのは変わってしまいます。

 点火タイミングが、カムシャフトと完全に連結されているディストリビューターのローターとディストリビューターキャップの位置関係(位相)によって決まってしまう以上、エンジン回転数に応じた最適な点火タイミングを実現しようとすると、双方の位相を何らかの方法で変化させなければいけません。

 その方法としてはガバナ進角装置とバキューム進角装置とがあります(進角:点火タイミングを早めること)。

 ガバナ進角装置は、エンジン回転数に応じて変化する遠心力によって進角させます。エンジン回転数が高くなるに従い、点火をしてからピストンが進む角度が速くなるため、エンジン回転数に応じて点火タイミングを早める必要性に追従する装置です。

 一方、バキューム進角装置は、エンジン負荷(スロットルバルブ開度)に応じて変化するエンジン負圧を検出して進角させます。スロットルバルブ開度が小さい状態(負圧大)では、シリンダー内に吸入される混合気量は少なくなります。混合気量が少ないということは、圧縮率が低いことを意味しているので、燃焼速度が遅くなります。エンジン回転数が高くなっても進角が必要でしたが、エンジン負荷が低くエンジン負圧が高い時でも点火タイミングを進角させる必要があります、そこで、良好な燃焼状態を維持するために機能するのが、バキューム進角装置なのです。

 このような高圧縮下でも強い火花を飛ばすことができる高電圧を、最適なタイミングで各シリンダーのスパークプラグへと分配され、燃焼が行われます(スパークプラグについては、次回に詳しく紹介します)。

 ディストリビューターからスパークプラグ間への送電は、断続的に高電圧が加わった時に発生する高周波の電波を減衰させるため、意図的に大きな抵抗を持たせたハイテンションコードが用いられます。

 では、前回のイグニッションコイルと、今回のディストリビューターを含めた点火装置の回路図をご覧ください。

直列4気筒エンジンの点火装置の回路図
直列4気筒エンジンの点火装置の回路図

 一次電圧を発生させる一次コイルをポイント接点が断続し、二次コイルに発生した二次電圧をディストリビューターのローター先端部と側方電極部によって各シリンダーへ配電している様子が分かりますね。

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