AIによる表情解析でうつ病予備群を可視化:医療技術ニュース
早稲田大学は、うつ病の前駆状態「サブスレッショルドうつ」における表情の特徴を明らかにした。抑うつ傾向を持つ若年層は、顔の表情が「豊か」「自然」「親しみやすい」を感じられにくい傾向にあることが分かった。
早稲田大学は2025年9月8日、うつ病の前駆状態「サブスレッショルドうつ(うつ病予備群)」における表情の特徴を明らかにしたと発表した。抑うつ傾向を持つ若年層は、顔の表情が「豊か」「自然」「親しみやすい」を感じられにくい傾向にあることが分かった。
研究対象は日本人大学生64人で、自己紹介動画を収集し、63人の評価者が印象を判定した。その結果、抑うつ傾向を持つ大学生は、「豊かさ」「自然さ」「親しみやすさ」「好感度」の評価が低い傾向にあった。
AI(人工知能)解析ツール「OpenFace 2.0」で表情筋の動きを調べると、眉や口元の筋肉に特徴的な動作パターンが確認された。うつ症状の程度を示すBDI-IIスコアが高いほど、特定の筋活動が強まり、出現頻度も上昇した。
同研究により、主観的評価とAI解析を組み合わせることで、医療機関を受診していない人の抑うつ傾向を可視化できるようになった。これまでうつ病患者の表情が乏しいことは知られていたが、診断基準を満たさない段階でも変化が現れることが確認された。
今回の成果は、抑うつ状態の早期発見を通じて、より効果的な精神疾患の予防、介入につながることが期待される。特に、学校や職場などでのメンタルヘルス支援に応用できる可能性がある。自撮り動画と簡易ツールを組み合わせれば、非侵襲的かつ日常的に心の状態を把握する手段になり得る。
ただし、対象が日本人大学生に限定されているため、他の文化や年齢層への適用は今後の課題となる。また、診断には自己申告式のBDI-IIのみを使用しており、臨床的評価を加える必要も考えられる。
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