タブレット端末で紙のような書き心地を実現するカバーガラスの量産プロセス確立:材料技術
「紙にペンで書く」感覚をタブレット端末で再現できたら……。こういったニーズに応えるために、日本電気硝子が、ガラス表面にナノレベルの微細な凹凸を施す新技術「微細凹凸技術」を開発し、この技術を適用したカバーガラスの量産プロセスを確立した。
日本電気硝子は2025年9月18日、ガラス表面にnm単位のテクスチャーを形成する独自技術「微細凹凸技術」を適用したカバーガラスの量産プロセスを確立したと発表した。これにより、同技術を採用した製品を安定的に提供できるようになり、タブレット端末をはじめとする幅広い市場への展開が可能となる。
撥水性も付与可能
タブレット端末や液晶ペンタブレットは、クリエイティブ分野からビジネスまで幅広く利用されている。これらのガラス画面はペン先が滑りやすく、紙のような自然な書き心地を再現できないという課題があった。専用フィルムも利用されているが、透明性や耐久性に劣る他、ペン先が削れやすいといった問題がある。
これらの課題を解決するために、日本電気硝子は微細凹凸技術を開発した。同技術は、ガラス表面にナノレベルの凹凸加工を施すことで、ペン先の滑りを適度に抑え、紙にボールペンで書くような自然な書き心地を実現する。さらに、凹凸がナノレベルであるためペン先の摩耗を抑え、ペン先の寿命の向上にも役立つ。
加えて、表面積の拡大とアンカー効果により、金属膜や樹脂膜などとの密着性を高められる。アンカー効果とは、凹凸の「くぼみ」に塗膜や接着剤が入り込み、物理的に引っ掛かることで剥がれにくくなる現象を指す。
撥水性を付与することで水滴の付着を抑え、雨天時でもクリアな視界を保てる。光の透過、反射、拡散も調整でき、ディスプレイの反射低減に使える他、高い透光性を維持したままプロジェクターから投射された映像を映し出す透明スクリーンなどに応用可能だ。
従来の専用フィルムと比べ、同技術を用いたカバーガラスは品質と耐久性の両面でも優位性を発揮する。長期間にわたり安定した書き心地を維持できるだけでなく、ガラス本来の質感や高い透明度/強度を損なうことなく、クリアな視認性も有している。
最大加工サイズは510×600mmで、ガラスだけでなく金属、セラミックス、樹脂への加工も可能だ。
日本電気硝子は、タブレット端末やディスプレイのメーカーに加え、教育/産業機器メーカーといった幅広いパートナー企業との協業を通じ、多様な市場に今回のカバーガラスの供給拡大を進めていく。
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