1週間で組み替え完了、レゴ感覚の自在型自動倉庫:国際物流総合展2025
ラピュタロボティクスは「国際物流総合展2025」において、レイアウトを自由自在に変更できる自動倉庫「ラピュタASRS」を展示した。導入した日本出版販売では生産性が2〜3倍向上したという。
ラピュタロボティクスは、「国際物流総合展2025 第4回 INNOVATION EXPO」(2025年9月10〜12日、東京ビッグサイト)において、自社開発の自動倉庫「ラピュタASRS」を披露した。
「自在型自動倉庫」をうたうラピュタASRSは、ポール、フロアパネル、ベースブロックという3つの部品で倉庫の構造を構成できるようになっている。各部品の接合にはネジやボルトなどは不要で、樹脂製で軽量であるためレゴブロックのように手作業で自由に組み替えできる。そのため、複雑な倉庫形状への設置や急な増設、防火区画をまたいだ設置も可能だ。同製品は2023年8月の販売開始以来、約20社に導入している。
地震対策も独自の技術を採用している。一般的な自動倉庫で採用される耐震構造では、地盤に打ち付けたアンカーによって揺れを吸収するようになっているが、自動倉庫の上層部になるほど揺れの影響が大きくなり製品の落下や損傷リスクが高くなる可能性がある。そこでラピュタASRSは床に固定しないアンカーレス構造としている。土台のベースブロックには免振材を使用し、ポールとポールの接合部にクリアランス(隙間)を設けることで、地震動発生時には各階層の接合部が揺れを吸収して全体の振動を大幅に軽減する、建築物における制震構造と同じ仕組みを取り入れた。
倉庫の各階層には高さ80mmの自動充電式搬送ロボットが、自動倉庫の構造を構成するポール間を移動して、製品などが入った箱(ビン)を持ち上げてピッキングステーションまで搬送する。ロボットは全て同社の群制御AI(人工知能)が制御しており、保管用、出庫用、入庫用に分かれたビンを、製品のSKU(ストックキーピングユニット)の出荷頻度に応じて最適なロボットを自動選択し、作業効率が最大になるよう運用している。
日販は生産性が約2〜3倍、保管効率が約2倍に向上
展示会場では、ラピュタASRSを導入した日本出版販売(日販)の担当者が登壇し、稼働時の課題や効果を語るトークセッションを行った。
日販は2023年10月に、従来は3拠点で分散していた文具雑貨の拠点を統合し、埼玉県新座市に「N-PORT新座」を開設。同倉庫内の約650m2の設置面積を用いて、高さ500mmのショートポール×9階層のラピュタASRSを導入した。約1万5千SKUの文具雑貨を保管用6000ビン、入庫用300ビン、出庫用50ビン、ロボット91台で運用している。
ラピュタASRSの採用の決め手は「導入後も需要増減に合わせて倉庫の形状を変えられることだ」(日販の担当者)という。実際に、導入初期は7人で行っていた出庫作業を、追加で10人増やすことになり急きょピッキングステーションを増設。増設作業は約1週間で完了したという。
ラピュタASRSは独自のWMS(倉庫管理システム)を標準搭載するだけでなく、他社製WMSとのAPI連携にも対応している。N-PORT新座ではセイノー情報サービスのWMS「SLIMS」を連動させ、WMSとWES(倉庫実行システム)出荷指示をトリガーにラピュタASRSが自動稼働する仕組みを構築している。
導入後の効果としては、生産性が従来比で約2〜3倍、保管効率が同約2倍に向上した。現状の出荷処理数は1ステーション当たり300行(1時間当たり)だが、今後は400行に達することが目標だ。
日販は、現在扱っている文房具の他に、近年出版社が力を入れているアニメやゲームなどのIPコンテンツ商品への対応を拡大する方針である。N-PORT新座を自社荷物のみならず、3PL事業拡大の拠点と位置付けている。ラピュタASRSが持つ異なる荷主の混載運用機能を活かして、自社5000ビン、他社1000ビンを組み合わせた運用を見据えて調整を進めている。
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