廃プラ部品リサイクルの固体異物分離率99%以上、ホンダのケミカルソーティング:リサイクルニュース
本田技術研究所がELV由来の廃プラスチック部品から資源となるプラスチックを選別し抽出する固体異物分離技術「ケミカルソーティング」を新たに開発。溶媒で樹脂を溶かして固体異物を除去することにより、高純度の樹脂を抽出できることを特徴とする。
本田技術研究所は2025年9月16日、ELV(使用済み自動車)由来の廃プラスチック部品から資源となるプラスチックを選別し抽出する固体異物分離技術「ケミカルソーティング」を新たに開発したと発表した。溶媒で樹脂を溶かして固体異物を除去することにより、高純度の樹脂を抽出できることを特徴とする。2026年中に、年間の最大処理能力350トン規模のパイロット設備の導入と実証を行い、2029年ごろの実用化を目指す。
一般的に自動車から出る廃プラスチック部品には、プラスチック製品やゴム製品などの成形品の中にあらかじめ埋め込まれているインサート金属やゴムホース、パッキン、樹脂に含有されるガラス繊維などの補強材をはじめプラスチックとは異なる固体異物が含まれている。これまで、固体異物が付帯した廃プラスチック部品をリサイクルするには、人の手や機械により物理的に選別を行う「フィジカルソーティング」を用いることが一般的だったが、分別の工程に伴うコスト上昇などさまざまな課題があった。
溶媒で樹脂を溶かして「固体異物」を除去できるケミカルソーティングは、フィジカルソーティングで80%程度にとどまっていた固体異物分離率を99%以上に改善するとともに高純度のプラスチックの抽出が可能である。この純度99%以上の高純度プラスチックは、メカニカルリサイクルやケミカルリサイクルなどの再資源化工程を経て、再び自動車用材料として使用する「水平リサイクル」に適用できるという。
目の粗いフィルターと遠心分離機による物理的分離を組み合わせ
ホンダによれば、従来手法を用いた廃プラスチック部品リサイクルでは大まかに分けて4つの課題があったという。
1つ目は「異物のサイズによる制約」である。従来手法では、対象とする異物のサイズごとにフィルターや工程の仕様を最適化する必要があった。廃プラスチック部品にはさまざまな大きさの異物があるが、異物の大きさを予想できない。このため、フィルターの目を細かく設定する必要があり、すぐに目詰まりを起こして処理作業が止まっていた。
2つ目は「材料の複雑性による制約」だ。自動車部品に使われるプラスチックは複数の樹脂、添加剤、充填(じゅうてん)材や付属部品が混在しており、従来手法ではこれらを効率よく分離することが困難だった。
3つ目は「スケールアップの難しさ」。多くの異物を集めるために目の細かいフィルターを用いると、数時間に1回は目詰まりに伴うフィルター交換の必要がある。そのため研究レベルでのリサイクルは可能でも、大量の廃材を安定的に処理できる連続プロセスとして成立させることが技術的に困難だった。
そして4つ目が「産業間の連携体制の構築不足」だ。リサイクルのためには産業界全体での取り組みが不可欠だが、これまでは十分な連携体制が整っていなかった。
今回発表したケミカルソーティングは、mmサイズの粗大異物に対しては目詰まりの少ない目の粗いフィルターを用い、μmサイズの微小異物に対しては遠心分離機による物理的分離を適用している。これにより、従来は異物のサイズごとに必要だった除去フィルターの仕様の調整が不要となり、微小異物から粗大異物まで一貫して除去可能になった。メンテナンスやフィルター交換も最小限化できるので、産業スケールで安定的に運用できる連続プロセスの構築にもつなげられる。
なお、ケミカルソーティングによる効果としては「選別工程の削減による設備投資の削減」「プロセス短縮による工程費用の削減」「歩留まりの向上(各選別工程で除去される異物側に樹脂が付帯してしまう量を削減)」「金属やゴムの混入を防ぐことで、後工程の品質基準をクリアできる質の高いプラスチックをより高効率に取得可能」「樹脂劣化温度より低温で、樹脂を溶解可能なためプラスチックの劣化を抑制」「リサイクルされた樹脂を固体の状態で排出することができるため、樹脂ペレットとしても取得可能」「従来焼却処理されていた強化繊維樹脂がリサイクル可能になったことによりCO2低減」などが挙げられている。
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