ホンダのUNI-CUBが「UNI-ONE」に、3歳でも車いすユーザーでも乗れる:モビリティサービス(1/2 ページ)
ホンダはハンズフリーパーソナルモビリティ「UNI-ONE(ユニワン)」を日本国内の法人向けに発売する。施設内の移動や、徒歩が伴うオフィス管理業務での負担を軽減するモビリティだ。
ホンダは2025年9月8日、ハンズフリーパーソナルモビリティ「UNI-ONE(ユニワン)」を日本国内の法人向けに同月24日に発売すると発表した。施設内の移動や、徒歩が伴うオフィス管理業務での負担を軽減するモビリティだ。期間限定のイベントなどで1日単位から利用できる短期のレンタルサービスや、複数年契約でメンテナンスや保険までパッケージにしたサービス契約の形式で販売する。
当面の販売目標として、2030年までの5年間で1000台の提供と40億円の売り上げを目指す。2028〜2030年ごろに日本国内で大型のスマートシティーが誕生することで需要が高まると見込んでいる。スマートシティーでは車両の乗り入れを規制した場合に他の移動手段が必要になるためだ。台数よりも、インフラとして長く使ってもらうことを重視する。
2025年10月19日からは、サンリオエンターテインメントが運営する屋外型のテーマパーク「サンリオキャラクターパーク ハーモニーランド」で約10台の導入が決まっている。小さな子どもや高齢者、障がいなどで長時間の歩行に不安がある来園者に提供する他、スタッフの移動にも使用する。
同施設はテーマパーク部分だけでも8ヘクタールと広大だ。敷地面積としては42ヘクタールあり、今後も開発の可能性がある。今後の姿として「エンタメリゾート化」を目指す中で、まだバリアフリーが十分ではないことが課題となっていた。UNI-ONEでバリアフリーを一層推進する。
サービス契約は3年または6年の契約年数で、台数に合わせて月額料金が発生する。UNI-ONE本体と交換用バッテリー2個、充電器に加えて、定期点検、修理サービス、コールセンター、利用者のケガを補償する搭乗者保険、対人対物賠償保険、運用管理アプリが提供される。本体やバッテリーだけでなくサービス体制も含めて提供するため、当面は日本国内のみで展開する。
高齢者など長い徒歩に不安を抱える人や車いすユーザーの移動を助けるだけでなく、AR/VRデバイスとUNI-ONEが連携したコンテンツ体験なども展開する。映像からのフィードバックに合わせて移動でき、デジタル酔いもしにくいため、幅広い年齢の人が楽しめる。NTT東日本のNTT e-City Laboやホンダモビリティランドが運営するモビリティリゾートもてぎで導入実績がある。AR/VRコンテンツの制作では他社と協力する。
歩くより速く移動することはできないが
UNI-ONEは「歩行者と共存する、ポニーのような相棒となる存在」を目指した。誰かに動かしてもらうのではなく自分の意志で自由に移動できるようにし、目的地での長い移動を諦めている人を助ける。7年間で10万人の使用データを集めて開発した。
UNI-ONEは、2009年公開の「U3-X」や2012年公開の「UNI-CUB」の後継モデルとして2022年に発表され、さまざまなイベントでの展示や試乗会で紹介した。2023年からは有償の実証実験を行い、量産化と事業化を目指して取り組んできた。走行性能の向上や使用可能時間の延長、セーフティー作動時の着地音を小さくするなど改良を加えた。
2025年1月には歩行者と同等の扱いとなる「移動用小型車(※)」として型式認定を取得し、公道(歩道)も走行できる。身体に不自由があることを前提にした電動車いすとは異なり、子どもから高齢者まで3世代で乗れることを重視して移動用小型車が最適だと判断した。
※移動用小型車の要件は次の通り。車体の大きさは、次に掲げる長さ、幅および高さを超えないこと。(1)長さ:120cm、(2)幅: 70cm、(3)高さ: 120cm。原動機として、電動機を用いること。時速6kmを超える速度を出すことができないこと。歩行者に危害を及ぼすおそれがある、鋭利な突出物がないこと。
テーマパークやショッピングモールなど目的地に到着した後の施設内の移動をターゲットにしているため、歩行者より速く移動することはできない。最高速度は時速6kmで、時速4.5km/3km/1.5kmに設定できる。交換式のリチウムイオン電池で駆動し、満充電で3時間または10km走行できる。これは時速6kmで走り続けた場合で、より低速で、時々立ち止まって移動するなど使い方によってはそれ以上の時間でも電池が持つ。
UNI-ONEが走行できる場所は、バリアフリー法に基づいて車いすが走行可能なエリアに準じる。同法ではスロープの勾配などが規定されている。UNI-ONEは20mmの段差や、10度までの傾斜に対応する(時速4.5kmで走行する場合。時速6kmなら傾斜は6度まで)。坂の途中でも傾斜を感じず、平たんな場所と同じ感覚でUターンできる。
IPx4相当の防水に対応しており、雨天でも利用できる。操縦に手を使わないため傘を差せる。水たまりや濡れたタイルの上も走行可能だ。アスファルトの他、学校などのグラウンド(運動場)のような土や、ぬかるんでいない芝生など、ある程度の硬さがある未舗装路も走行できる。
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