シニアにうれしく子どもも乗りたがる、ダイハツが新たな「移動手段」:車両デザイン(1/2 ページ)
ダイハツ工業は歩行領域モビリティ「e-SNEAKER」を発売した。道路交通法では歩行者と同じ扱いになるため、運転免許は不要だ。メーカー希望小売価格は41万8000円。全国の販売店で一斉に発売しており、電動車いすに該当するため非課税で購入できる。年間販売目標は500台だ。
ダイハツ工業は2025年8月25日、歩行領域モビリティ「e-SNEAKER」を発売したと発表した。道路交通法では歩行者と同じ扱いになるため、運転免許は不要だ。メーカー希望小売価格は41万8000円。全国の販売店で一斉に発売しており、電動車いすに該当するため非課税で購入できる。年間販売目標は500台だ。
ダイハツは大阪・関西万博で「スマートモビリティ万博・パーソナルモビリティ」に協賛し、150台のe-SNEAKERを会場内の移動手段として提供している。製品としてはアクティブなシニアを主なターゲットにしているが、大阪・関西万博の会場では老若男女の来場者が利用している。対象年齢以下の子どもも乗りたがるなど、年齢を問わないモビリティとして仕立てることに成功した。
「祖父母が普段は使っていて、帰省した孫などが『おじいちゃん、おばあちゃん、これちょっと貸して』と言って乗って遊びに行くような、世代を超えて使いたくなるモビリティになればと考えている」(ダイハツの担当者)
超小型モビリティではない理由
地方を中心にバスなど公共交通機関の減便や廃止が進んでおり、「公共交通が減り自動車が運転できないと生活できない」と感じる人は人口規模の小さい市町村で4割前後を占める。その一方で直近では年間40万人以上が運転免許を返納し、今後も一定数の免許返納が見込まれるなど、生活圏内やラストワンマイルの移動手段の重要性が高まっているという。ダイハツはオンデマンド乗り合い送迎サービスや介護福祉向けの送迎支援サービスなどにも取り組んでいる。
しかし、生活圏の移動手段は「さまざまな提案があるものの、最適解には届いていない」(ダイハツ 製品企画部 プロジェクト責任者の鐘堂信吾氏)。ダイハツはラストワンマイルの移動手段の選択肢を増やすことが重要だと考え、e-SNEAKERを開発した。
e-SNEAKERは移動の「最小単位」にこだわり、自動車の延長線上にある超小型モビリティではなく、電動車いすのカテゴリーで「歩行領域のちょっと先」を楽しめるモビリティを実現した。e-SNEAKERは自宅から半径1.5km以内の生活圏だけでなく、広い公園やテーマパーク、大阪・関西万博のようなイベント会場での移動もターゲットとしている。大型施設での導入可能性の調査も進めていく。
自家用車で出掛けることに慣れている人が運転免許を返納した後は、電動車いすよりも自動車の延長線上にある超小型モビリティの方が好まれるように思える。ダイハツとしても、コンセプトカーも含めて超小型モビリティを長年検討してきた。
ただ、車両が屋根のあるクローズドな空間になると空調が必須になり、バッテリー容量も大きくなるなど、「どんどんクルマとして肥大化してしまう。今回は人間1人の移動をどこまでそぎ落として最小単位にできるかを考えたので、乗用車とは違うアプローチだ」(ダイハツ 総務部兼製品企画部 主査の北野恵睦氏)。また、車道で超小型モビリティと既存の自動車が共存する混合交通も難しいと判断し、歩行者と共存する電動車いすのカテゴリーで選択肢を提案することにした。
スーパーやショッピングモールなど屋内でのe-SNEAKERの走行は、施設側への確認が必要だ。施設側の許可があれば屋内でも走行できるが、e-SNEAKERは屋外の段差などへの対応を重視した。他社の電動車いすは、車いすとしての室内での利用をメインにホイールベースを短くするなど小回りが利くことにこだわったものもあるが、差別化を図る。
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