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DNPと九州大学発スタートアップがタッグ、低コスト/高効率な脱炭素技術の開発推進脱炭素

DNPが脱炭素社会の実現に向けて大きな一歩を踏み出した。九州大学発のスタートアップであるJCCLとタッグを組み、従来のCO2分離回収技術が抱える高コスト/高エネルギーという課題の解消に挑む。

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 大日本印刷(DNP)と、九州大学発のスタートアップであるJCCLは2025年9月11日、CO2分離回収技術を活用した事業開発やDNPグループの温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)排出量の削減に関する協業を同年10月に開始すると発表した。

DNP科学分析センターがCO2分離回収装置を導入

 日本政府は2025年に「GX2040ビジョン」を閣議決定し、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて脱炭素技術の開発と社会実装を推進している。その方策の1つとして、排気や大気中のCO2の回収/有効利用が必要とされている。従来の高コスト/高エネルギーを要する技術ではなく、低コストで高効率なCO2分離回収技術とその社会実装が求められている。

 DNPは、2020年3月に「DNPグループ環境ビジョン2050」を策定し、自社拠点での事業活動に伴うGHG排出量(Scope1+Scope2)の実質ゼロに向けて、省エネルギー活動の強化や再生可能エネルギーの積極的な導入を進めている。Scope1は燃料の使用や工業プロセスでの直接排出の温室効果ガス排出量を指し、Scope2は他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出量だ。また、独自の印刷技術を強みとし、環境配慮製品/サービスを通じて脱炭素社会の実現を後押ししている。

 一方JCCLは、固体材料を使用してCO2を吸収/分離する「固体吸収法」と、分離膜を使用して排ガスや大気中からCO2を分離する「膜分離法」といった2種のCO2分離回収技術を強みとし、国内外のCO2排出量の削減を目指して技術と事業の開発を実施。国/地域や企業とのプロジェクト、協業、試験受託などの実績も重ねている。

 今回は両社の協業によって、CO2分離回収技術を活用してDNPの各工場のGHG排出量の削減を目指すとともに、CO2の分離回収効率を高める事業を展開することで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する。

 協業の主な取り組みに関して、両社は、固体吸収法と膜分離法を組み合わせたCO2分離回収技術を活用し、排ガスの回収検証や関連装置の製作を進め、2030年度からDNPグループの工場へ設置していく予定だ。さらに、CO2の分離、回収、利活用のスキームを確立してDNPの各工場に展開することで、Scope1に該当するGHG排出量の削減を目指す。この取り組みで培うノウハウを生かして、新たな事業の開発につなげていく。

 JCCLは、CO2分離回収に関する材料、性能評価、装置、プロセス設計技術などの幅広い強みも生かして、ワンストップで開発を行える。このJCCLの強みとDNPの印刷技術による量産化の強みを掛け合わせ、両社はCO2分離回収技術の高度化や関連する装置/モジュールの量産化に向けて、生産プロセスの確立、量産性評価を進める。

 DNP科学分析センターは今回、JCCLが提供する固体吸収法を活用したCO2分離回収装置を導入する。これにより、CO2吸収剤/吸着剤の性能評価やCO2回収プロセスの開発/実証の評価など、CO2分離回収に関する分析サービスを2025年10月に提供開始する。この分析を同社の事業に加えることで、幅広い分析/評価のサービスをより多様な顧客へ提供できるようになる。

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