月販300台でも2ドアクーペを作る、ホンダが新型「プレリュード」発売:電動化(2/2 ページ)
新型プレリュードは2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」と、仮想の8段変速を行う「S+ Shift」を搭載したハイブリッド車(HEV)だ。ホンダは2030年に向けた電動化戦略の中で2027年からは次世代HEVを展開し、HEV戦略を強化する。新型プレリュードは、ホンダのHEVブランドを牽引する“前奏曲(プレリュード)”としての役割も背負っている。
消費税込みのメーカー希望小売価格は617万9800円だ。メーカーオプションなしの単一グレードで展開する。新型プレリュードのシャシーはシビックタイプRと、パワーユニットはシビックe:HEVと共通だ。シビックタイプRのシャシーをそのまま使うのではなく、乗り心地を重視してセッティングし直した。
「なんでもかんでも新しいものを取り入れると車両価格が簡単に2000万円、3000万円と上がってしまう。そうなると全く手の届かない、自動車メーカーの自己満足になる。決してそういう風にはしたくなかったので、今ある技術を熟成させるように、手元の材料を最高のレシピでおいしく作ることに取り組んだ。それでも600万円という価格だが、それに見合うだけの価値を理解してもらえるクルマになったと思っている。また、価値を理解してもらえるようなプロモーションもしていきたい」(山上氏)
年間3万台の2ドアクーペ市場へ
新型プレリュードのターゲット層は、かつてのプレリュードを知る人などホンダファンに加えて、運転の楽しさや車格に応じた装備を重視する人を想定している。また、子どものころに親がプレリュードに乗っていたという若い層も狙う。「親と趣味や価値観を共有する世代では、親子で使う人もいるのではないか」(山上氏)
ホンダは2ドアクーペの日本市場は年間3万〜4万台と見込んでいる。その中で、新型プレリュードのようなスポーツHEVは他社にはないという。ただ、2ドアクーペは輸入車の場合は為替の影響で価格が上昇。環境規制への対応を鑑みて販売を終了するモデルも増えている。「新型プレリュードはHEVなので燃費がよく、レギュラーガソリン仕様なので経済性にも自信がある」とチーフエンジニアの山上氏は説明した。
「バブルのころはこういうクルマ(2ドアクーペ)がたくさんあった。ユーザーもどれにしようか悩めるほどだった。ホンダが新型プレリュードを出すことで世の中が活性化して、他社からももっとこういうクルマが出てくると、市場も変わっていくのではないか。2ドアクーペがなくなったのは自動車メーカーの責任が大きい。売れないから作らない、作らないから買えない、そしてみんなが忘れていく。魅力があれば、人は見てくれるはずだ」(山上氏)
山上氏は1969年生まれの56歳。2ドアクーペ全盛のバブル期に学生時代を過ごした。「高校を卒業して働き始めた友人が2代目のプレリュードを手に入れていた。プレリュードのかっこよさや、彼にすぐ恋人ができたことをよく覚えている」(山上氏)と話す。
「新型プレリュードは以前の2ドアクーペのように好き勝手なクルマにするのではなく、共感を大事にした。開発メンバーが共感することや、買う人がコンセプトに共感すること、例えば夫婦で夫がほしがったときに妻が共感することなどだ。“2ドアで燃費が悪くてうるさいクルマなんてイヤ”と言われないようにした。夫婦でクルマに乗ると夫が運転することが多いのではないか。新型プレリュードは運転しやすく、運転を楽しめるので、妻もハンドルを離したくなくなるはずだ」(山上氏)
かつての2ドアクーペは「いつか手に入れたい」と憧れられる対象だった。「まずは新型プレリュードに恋をしてもらいたい。縁がなくて振り向かない人もいるかもしれないが、時間をかければ理解してもらえると思うし、理解してもらえるだけのクルマを作ってきた。SUVやミニバンが多い中でこういう低いクルマが走っているのは新鮮に映るのではないか。人がやらないことをやるのがホンダだ」(山上氏)
「かっこいいと思ったり、気持ちが前向きになったりする何かを人々は潜在的に求めていると考えた。そうした欲求は、家族や配偶者など自分以外の誰かを優先する日常の中で忘れがちになる。アルバイトをたくさん掛け持ちしてほしいクルマを手に入れた、このクルマのために頑張って働こうと思ったあの頃の気持ちだ。憧れるクルマ、いつか手に入れたいと思ってもらえるクルマを目指した」(山上氏)
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