低価格で量産可能な宇宙用国産太陽電池の開発を開始:宇宙開発
三菱電機は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の技術開発課題「国産太陽電池セル・カバーガラスおよび搭載アレイの開発」の代表機関に選定された。国内サプライヤーと連携し、低価格で量産可能な太陽電池セルの開発を目指す。
三菱電機は2025年8月21日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の技術開発課題「国産太陽電池セル・カバーガラスおよび搭載アレイの開発」の代表機関に選定されたと発表した。
同課題は、宇宙戦略基金第一期のテーマ「衛星サプライチェーン構築のための衛星部品・コンポーネントの開発・実証」の1つだ。実施期間は2025年5月〜2031年3月。三菱電機は国内サプライヤーと連携し、低価格で量産可能な太陽電池セルの開発を目指す。
また、地上製品のガラスが宇宙に適用できるかを検証し、低価格なカバーガラスの量産化にも取り組む。太陽電池のセルやカバーガラスを搭載する太陽電池アレイも開発し、これらを国内で一貫して生産できる体制を構築することで、価格と供給の問題を同時に解決する。
さらに、セル開発ではPXPと連携。光電変換素子のペロブスカイトやCIGS(主に銅、インジウム、ガリウム、セレンから成る化合物半導体材料)タンデム太陽電池セルの実用化を検討する。
これらは広く使われているIII-V族セルと同等の変換効率を保ちつつ、宇宙放射線に強く劣化を抑えられる上、製造が容易で、低価格化と量産化に適している。三菱電機は、自社の衛星システム開発技術とPXPの太陽電池セル製造技術を組み合わせて、宇宙空間でも効率、信頼性が高い太陽電池セルの量産を目指す。
三菱電機は、同課題において開発した太陽電池セル、カバーガラス、太陽電池アレイを多様な国産衛星向けに供給し、日本の宇宙産業の自律性向上、競争力の強化に貢献する。
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