屋内外の光で発電するペロブスカイト太陽電池 電極に単層CNTを活用:研究開発の最前線
名古屋大学は、単層カーボンナノチューブを電極に使用した、ペロブスカイト太陽電池を開発した。両面受光により屋内外の光で発電が可能で、光透過性があるため窓に貼付しても外の景色を視認できる。
名古屋大学は2025年3月11日、デンソーと共同で、単層カーボンナノチューブ(CNT)を電極に使用した、ペロブスカイト太陽電池(CNT-PSC)を開発したと発表した。10cm角、100cm2サイズのモジュールを作製し、同月より研究施設内にあるカフェの横の窓で実証実験を実施している。
軽量かつフレキシブルなペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン太陽電池に代わる次世代の太陽電池として注目を集めている。しかし、裏面電極に金属の蒸着薄膜を使用しており、酸化による耐久性の低下が課題となっていた。
CNT-PSCは、酸化や腐食に強いCNTを電極に用いることで、耐久性が向上。窓に貼付すれば、両面受光により屋内外の光で発電が可能だ。光透過性があるため、金属電極に比べて電極が視覚的に目立たず、外の景色を視認できる。正孔ドープ材料として2,2,2-トリフルオロエタノールを使用し、PSCの安定性を高めた。
実証実験では、太陽電池パネルにCNT-PSCを1枚、CNT電極を搭載した9枚の有機薄膜太陽電池(CNT-OPV)を貼り付け、発電量、光照度、温度、湿度などを記録した。また、太陽光で蓄積した電力を活用し、LEDの点灯システムも稼働している。
CNT電極は、材料が炭素のため柔らかく軽量で、フレキシブル基板や曲面にも適用できる。CNTは、資源が豊富な炭素のみで構成され、環境へも配慮した持続可能な材料として高い価値を有する。今後、グリーンエネルギー源として実用化が期待される。
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