積水化学がペロブスカイト太陽電池の量産化を開始、事業会社も設立:工場ニュース
積水化学工業は2024年12月26日の取締役会でペロブスカイト太陽電池の量産化を開始することを決議した。
積水化学工業(以下、積水化学)は2024年12月26日、同日の取締役会でペロブスカイト太陽電池の量産化を開始することを決議したと発表した。
量産化の目的
同社は2025年の事業化を目指し、経済産業省や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが推進するグリーンイノベーション(GI)基金を活用し、軽量フレキシブルペロブスカイト太陽電池の開発/量産技術確立に取り組んできた。その結果として、一定の技術を確立できている。
しかし、2025年の事業化に向けては、現有設備で製造を行う方針を掲げていたが、製造コストの低減やそれを可能とする生産能力拡大が課題だった。
一方、経済産業省のグリーントランスフォーメーション(GX)サプライチェーン構築支援事業で2024年12月25日に、積水化学のペロブスカイト太陽電池事業が採択された。
そこで積水化学は、政府が目指すペロブスカイト太陽電池によるギガワット(GW)級の供給体制構築を2030年の早期までに中心となり実現するため、まずは2027年に100メガワット(MW)製造ライン稼働を目指し設備投資を行うことを決定した。
今後も海外展開も視野に入れ、需要の獲得を進め段階的に増強投資を行い 2030 年にはGW級の製造ライン構築を目指す。
量産化の概要
積水化学は、大阪府堺市にあるシャープの本社工場の建物や電源設備、冷却設備などを譲り受け、ペロブスカイト太陽電池製造設備を導入し、製造/販売を行う。
この事業を開始するに当たりペロブスカイト太陽電池の設計、製造、販売を行うことを目的とした新会社「積水ソーラーフィルム株式会社」を設立し事業運営を実施する。
積水ソーラーフィルムではまず、ペロブスカイト太陽電池が持つ軽量でフレキシブルという特徴を生かし、耐荷重性が低い屋根や災害時避難所となる体育館などを中心に導入を進める。さらに量産効果でコストを低減し、民間の工場、倉庫などの屋根、外壁面もターゲットに需要創出を行い、事業拡大を狙っていく。
なお、2024年12月26日には積水化学とシャープ間で建物売買契約に伴う基本合意を締結した他、設立する会社の共同運営に関して、日本政策投資銀行と株主間契約を締結した。
積水ソーラーフィルムの所在地は大阪市北区西天満2-4-4で、資本金は1億円。株主比率は積水化学が86%で、日本政策投資銀行が14%となり、設立は2025年1月6日を予定している。
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