宇宙の放射線環境に強い耐性がある自己修復強化型太陽電池を開発:研究開発の最前線
PXPは、自己修復機能を強化したカルコパイライト太陽電池を開発した。宇宙の放射線環境に強い耐性を備え、太陽電池を実運用する気温でも、タンデム化した場合でも、自己修復機能を十分に発揮する。
PXPは2024年6月11日、自己修復機能を強化した、カルコパイライト太陽電池を開発したと発表した。宇宙の放射線環境に極めて強い耐性があるため、長寿命化が可能となる。
同社はこれまで、自己修復機能を強化したカルコパイライト太陽電池の開発に取り組んできた。2023年6月に開催された第50回IEEE太陽光発電専門家会議において、宇宙の静止軌道上の環境では約100年、低軌道上の環境では約400年に相当する陽子線に被ばくしたとしても、同電池は熱と光で自己修復し、性能維持率100%まで回復することを発表した。
しかし、太陽電池を実際に運用する比較的低い温度環境下や、太陽電池を積層してタンデム化した場合にトップセルを透過した弱い光において、同レベルの自己修復効果が発現するかは未確認だった。
その後、同社は2024年6月開催の第52回IEEE太陽光発電専門家会議にて、太陽電池を実運用する気温においても、タンデム化した場合でも、自己修復機能が十分発揮されることを報告した。
カルコパイライト太陽電池は、宇宙環境で約100年分に相当する電子線量を被ばくしても性能が劣化しないなど、優れた放射線耐性を持つことが知られていた。近年の研究では、同電池は熱と光を使って被ばくによる損傷を自己修復するという報告があり、放射線耐性の強さはこのメカニズムによるものと考えられる。しかし、電子線よりも大きな損傷を受ける陽子線を大量に被ばくした場合は、自己修復がダメージ拡大に対応できず、劣化が発生していた。
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