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2025年上期の新車生産は2年ぶりにプラス、稼働停止の反動増で自動車メーカー生産動向(4/4 ページ)

日系自動車メーカーの2025年上期の自動車生産は、前年の型式指定の認証不正問題やリコールによる稼働停止の反動増があった一方で、中国市場の競争激化や東南アジアの経済低迷など、メーカーによって明暗が分かれた。

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マツダ

 マツダの2025年上期のグローバル生産は、前年同期比3.1%減の57万3870台と2年連続で減少した。メインの国内生産が伸び悩み、同5.3%減の34万9154台と2年連続のマイナスとなったことが要因だ。海外生産が伸長したことで、世界生産に占める国内生産比率もこれまでの3分の2程度から60.8%まで低下した。「CX-60」の生産増加や新型車「CX-80」の純増などがあったものの、主力車種の「CX-5」が同8.1%減と落ち込んだ他、「マツダ6」の生産終了なども影響を及ぼした。

 海外生産は、前年同期比0.6%増の22万4716台と辛うじてプラスを確保し、3年連続で増加した。「CX-50」の販売が好調な米国工場は同24.0%増と大幅に増加。ただ、メキシコは同国内や米国向けの「CX-30」や「マツダ3」が減少し同4.4%減と前年割れ。北米トータルでは同5.0%増だった。中国は新型EVの「EZ-6」や「マツダ6e」が純増となり、同3.9%増と2年連続で増加。タイはイスラエルやオーストラリア向けの「CX-3」や「マツダ2」が減少するなど、同26.4%減と大きく落ち込んだ。

 また、マツダは足元でも低調さが目立つ。6月単月のグローバル生産は、前年同月比6.7%減の9万5852台と5カ月連続で減少した。8社で最も大きな落ち込みとなった。中でも国内生産が伸び悩み、同8.4%減の6万930台と5カ月連続のマイナス。マツダ3が同37.5%減と大幅に減少した他、海外向け「CX-90」などの新型車効果が一巡した。ただ、欧州向けが伸長したCX-30は同72.1%増と大幅増を記録した。

 海外生産も前年同月比3.7%減の3万4922台と2カ月連続のマイナスだった。中国はEZ-6やマツダ6eの純増などで同30.7%増と大幅プラス。米国も同21.1%増と好調だ。一方、タイはオーストラリア向けCX-3の減産などにより同34.1%減と厳しい他、メキシコも米国向けCX-30やメキシコ市場向けマツダ2の減少などで同19.0%減となった。北米トータルでも同4.1%減と伸び悩んだ。

 今後も厳しい情勢が予測されるマツダだが、米国の追加関税の影響を大きく受けそうだ。すでに2025年4〜6月期の業績でも、関税や為替の影響により461億円の営業赤字となった。好調だった米国販売もインセンティブ(販売奨励金)を大抑制していることもあり、6月には前年同月比6.5%減と低迷した。米国の販売車両の多くを日本やメキシコからの輸入で賄っており、関税影響を避けられそうにない。

 唯一の米国生産拠点であるアラバマ工場では、米国向けの他カナダ向けも生産しており、関税への対応策として、5月中旬からカナダ向けの生産を一時停止し、米国向け車両の増産を開始した。社長の毛籠勝弘氏は8月5日の決算説明会で関税対策として「あらゆる手段を講じていく」と危機感をあらわにした。

スバル

 スバルの2025年上期のグローバル生産は、前年同期比3.6%増の46万7852台と5年連続で前年実績を上回った。このうち国内生産は、同15.6%増の29万3173台と2年ぶりのプラス。8社の国内生産でも認証不正問題のダイハツを除くと唯一の2桁パーセント増だった。これは前年が群馬製作所矢島工場(群馬県太田市)で発生した死亡事故を受けて稼働停止や生産ペースを落としていた反動が表れた他、新型「フォレスター」の生産増などもプラス要因となった。一方、唯一の海外拠点である米国生産は同11.7%減の17万4679台と5年ぶりのマイナスだった。前年が半導体不足からの回復で増産していた反動減が出た格好だ。

 6月単月のグローバル生産は、前年同月比0.5%増の8万4898台と3カ月連続のプラス。海外生産は、同2.6%増の3万952台と2カ月連続で増加した。国内生産は、同0.7%減の5万3946台と微減で5カ月ぶりの減少だった。スバルは計画通りの生産台数としている。

 グローバル販売のうち米国が7割を占めるスバルも、追加関税の影響を避けられない見通しだ。関税影響などにより2025年度通期の営業利益は前年から半減する見通しを公表した。また、EVシフトの鈍化を受けて、2030年にEV比率を半数とする販売目標の先送りを発表した。併せて米国で人気のHEVの生産を増やしていく方針を打ち出した。需要に応じた車種の供給で安定した収益を確保し、関税影響の抑制にもつなげていく考えだ。

三菱自動車

 三菱自の2025年上期のグローバル生産は、前年同期比6.3%減の43万8415台と2年連続で前年実績を下回った。8社の順位ではスバルを下回り最下位で定着しつつある。要因は海外生産の低迷で、同12.9%減の19万8807台と4年連続のマイナス。減少幅も8社で最も落ち込んだ。三菱自が得意とする東南アジアの市況低迷が響いており、主力のタイが経済低迷やローン審査の厳格化などにより同32.3%減と大幅減となった。一方、厳しかったインドネシアは回復しており、同33.5%増と伸長した。それでもタイの低迷をカバーできず、アジアトータルでは同13.3%減と厳しい結果となった。

 国内生産は、前年同期から18台少ない23万9608台と2年連続で減少した。国内向けでは、大幅改良を実施した「アウトランダーPHEV」や「デリカD:5」の販売が好調だったものの、人気の軽自動車「デリカミニ」の新型車効果が落ち着いた他、日産にOEM(相手先ブランドによる生産)供給するEV「サクラ」が低迷した。輸出は同1.2%減と2年連続で減少した。

 長らく厳しい状況が続いていた三菱自も、ようやく回復の兆しを見せている。6月単月のグローバル生産は、前年同月比2.5%増の7万969台と3カ月連続のプラス。このうち海外生産は、同12.0%増の3万4414台と2カ月連続で増加した。回復が進むインドネシアは同45.2%増と大幅プラス。タイも同3.1%減と減少したが、減少幅は着実に縮めている。その結果、アジアトータルでも同11.6%増と伸長した。

 ただ、国内生産は、前年同月比5.1%減の3万6555台と4カ月ぶりにマイナスへ転じた。フルモデルチェンジを控えたデリカミニや、日産にOEM供給する「ルークス」などが減少した。輸出も同12.0%減と2カ月ぶりのマイナスとなった。

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