2025年上期の新車生産は2年ぶりにプラス、稼働停止の反動増で:自動車メーカー生産動向(3/4 ページ)
日系自動車メーカーの2025年上期の自動車生産は、前年の型式指定の認証不正問題やリコールによる稼働停止の反動増があった一方で、中国市場の競争激化や東南アジアの経済低迷など、メーカーによって明暗が分かれた。
スズキ
スズキの2025年上期のグローバル生産は、前年同期比1.5%減の165万943台と5年ぶりに減少した。それでも8社の順位では3位が定着しつつあり、2位のホンダとは約8万5000台差まで近づいた。生産の3分の2を占めるインドは、マネサール工場で2024年4月から新ラインを稼働し年10万台分の能力増強を行った他、2025年2月にはカルコダ工場の稼働を開始。さらに中近東およびアフリカ、日本向けの輸出増加などもあり、同4.5%増と5年連続で増加し、上期のインド生産として過去最高を更新した。
一方、インド以外の海外生産は、タイ生産を2月に終了した他、ハンガリーの減産などにより、前年同期比11.7%減と低迷したが、インドの好調がカバーし、海外生産トータルでは同2.9%増の119万847台と2年連続で前年実績を上回った。
海外が好調だった半面、国内生産は低迷し、上期は前年同期比11.4%減の46万96台と3年ぶりのマイナス。8社の国内生産では最も大きな落ち込み幅となった。要因としては、中央発條の爆発事故の影響により、3月から4月にかけて相良工場(静岡県牧之原市)と湖西第2工場(静岡県湖西市)で稼働停止を余儀なくされ、「スイフト」「ソリオ」「クロスビー」「アルト」「ワゴンR」などの出荷に影響が及んだ。さらに5月から6月にかけては、中国のレアアース輸出規制の影響でスイフトの生産を停止した。また、欧州向け「イグニス」「ジムニー」の生産終了も減産要因となり、輸出も同29.6%減と大幅に減少し、5年ぶりのマイナスとなった。
伸び悩みの傾向は続いており、6月単月のグローバル生産は、前年同月比4.1%減の22万5132台と5カ月連続で減少した。国内生産は、中国のレアアース輸出規制でスイフトの稼働を止めた他、欧州向けイグニスやジムニーの生産終了などもあり、同2.8%減の8万2971台と5カ月連続のマイナスだった。輸出も同25.5%減と6カ月連続で減少した。
6月は海外生産も落ち込んでおり、前年同月比4.9%減の14万2161台と5カ月連続で前年実績を下回った。主力のインドで販売店の在庫などを考慮して生産調整したこともあり、同13.3%減と2カ月連続で減少した。この理由について、インド事業を担当する常務役員の鈴木浩一氏は「インドでは特に中間所得層の可処分所得が厳しい。(SUVなどより)小さいクルマの方が影響を受けており、我慢の時だと捉えている」と説明する。ただ、インド以外の海外生産は、ハンガリーはマイナスだったが、パキスタンの増加により同5.3%増と5カ月ぶりにプラスとなった。
日産自動車
国内外ともに厳しい状況なのが日産だ。2025年上期のグローバル生産台数は、前年同期比10.8%減の143万9040台と2年連続で前年実績を下回った。8社の順位でも3位のスズキに約21万2000台の差をつけられるなど、4位が定着しつつある。このうち国内生産は、同11.1%減の29万1773台で2年連続のマイナス。輸出モデルの「パトロール/アルマーダ」は好調だったが、国内市場向けおよび輸出向けの「エクストレイル/ローグ」やEV「アリア」が低迷した。その結果、輸出も北米向けが同34.1%減と低迷するなど、同17.8%減と2年連続で減少した。
海外生産も厳しく、前年同期比10.8%減の114万7267台と4年連続の前年割れだった。主要市場の北米は、「キックス」が増えたメキシコは同0.3%増と何とかプラスを維持したものの、米国はローグが低迷した他、2024年8月に「タイタン」を生産終了したこともあり、同14.7%減と大きく落ち込んだ。中国も、市場のEVシフトやそれに伴う競争激化などで「シルフィ」やエクストレイルが減少して同20.9%減と厳しく、4年連続のマイナス。英国もEV「リーフ」の生産終了や「キャシュカイ」の減少により同16.6%減と5年ぶりに減少した。
大幅赤字を計上している日産は、現在進めている経営再建計画「Re:Nissan」で、2027年度までに世界の車両生産17拠点のうち7工場の閉鎖・統合を予定する。7月には追浜工場(神奈川県横須賀市)の生産を2027年度末に終了することや、グループ会社の日産車体湘南工場(神奈川県平塚市)への生産委託も2026年度末までの終了を発表。さらにメキシコのシバック工場(旧クエルナバカ工場)の操業も2025年度内に終了すると発表した。これらの取り組みにより生産能力を2024年度の約500万台から250万台(中国除く)まで大幅に引き下げる方針で、販売実績に見合った規模に縮小することで収益性を改善する考えだ。
厳しい状況の日産だが、足元では回復の兆しも出始めた。6月単月のグローバル生産は、前年同月比2.7%増の25万3068台と13カ月ぶりに前年実績を上回った。要因は海外生産で、同4.5%増の20万4089台と13カ月ぶりにプラスへ転じた。国別では、主力の米国で「ムラーノ」や「パスファインダー」が増加し、同12.4%増と14カ月ぶりのプラス。ただ、メキシコは同2.2%減と2カ月ぶりに減少した。また、長らく厳しい状況が続いていた中国は、新型EV「N7」の投入により同4.2%増と13カ月ぶりに増加へ転じた。英国は低迷が続いており、同3.8%減と13カ月連続で減少している。
海外で回復の動きが見られる一方で、国内は低迷が続く。6月の国内生産は前年同月比4.1%減の4万8979台と16カ月連続のマイナスだった。7月の国内販売を見ると、「ノート」が同13.1%減、「セレナ」が同15.9%減、一部改良を控えたエクストレイルは同49.1%減と、主力モデルが軒並み低迷した。海外向けはパトロール/アルマーダが同2.2倍と好調だったが、エクストレイル/ローグの低迷が続いており、その結果、輸出は同19.6%減と大きく落ち込み、8カ月連続のマイナスだった。
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