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2025年上期の新車生産は2年ぶりにプラス、稼働停止の反動増で自動車メーカー生産動向(2/4 ページ)

日系自動車メーカーの2025年上期の自動車生産は、前年の型式指定の認証不正問題やリコールによる稼働停止の反動増があった一方で、中国市場の競争激化や東南アジアの経済低迷など、メーカーによって明暗が分かれた。

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トヨタ自動車

 メーカー別に見ると、トヨタの2025年上期のグローバル生産台数は前年同期比5.8%増の491万8024台と2年ぶりに増加へ転じ、上期の世界生産として過去最高を更新した。このうち国内生産は、同8.7%増の163万9637台と2年ぶりのプラスとなった。

 前年は、豊田自動織機のエンジン認証不正問題で「アルファード」や「ハイエース」「ランドクルーザー300」などを1月末から3月上旬まで稼働停止した他、「プリウス」の後席ドアハンドルの不具合によるリコールで4月上旬から6月中旬まで稼働を停止。生産工程の確認のため「ノア/ヴォクシー」とアルファードも4月上旬から中旬まで停止するなど、主力モデルの生産を相次ぎ停止していた反動増が表れた格好だ。輸出も、北米や欧州、アジア、中東向けなどがけん引し、前年同期比8.8%増の99万1514台と3年連続の前年超えとなった。

 海外生産も好調だ。前年同期比4.4%増の327万8387台と2年ぶりに前年実績を上回るとともに、上期として過去最高を更新した。地域別では、主要市場の北米は、底堅い需要や「カムリ」「シエナ」などのHEV人気がプラス材料となり、同5.7%増と3年連続で増加した。さらに中国も、市場のEVシフトによる販売競争の激化はあったものの、新型EV「bZ3X」やHEVの好調、政府の補助金政策と連動した販売促進策などが奏功し、同12.3%増と3年ぶりに前年実績を上回った。

 中国以外のアジアは、主要市場のタイが経済低迷や自動車ローンの厳格化などの影響が続いており前年同期比1.3%減と減少。インドネシアもローンの厳格化が続いているが、輸出需要の拡大により同7.0%増とプラスを確保した。インドは同0.8%減、フィリピンも同0.8%減と前年並み、マレーシアは同4.4%減と減少した。その結果、アジアトータルでは中国の回復により同6.1%増と2年ぶりにプラスを確保した。欧州は、前年と比べて稼働日が少ないことも影響し、同7.7%減と落ち込み3年ぶりにマイナスへ転じた。

 足元でも回復基調は続いている。6月単月のグローバル生産は、前年同月比7.4%増の85万4565台と2カ月ぶりのプラスだった。このうち国内生産は、同7.6%増の27万3438台と2カ月ぶりの前年超え。前年の認証不正やリコール対応などの反動増に加えて、新型車の投入効果が表れた。

 海外生産も好調で、前年同月比7.3%増の58万1127台と5カ月連続で前年実績を上回った。主要市場の北米は、HEV人気などに支えられて同10.1%増と4カ月連続のプラス。北米に生産拠点を構える5社で唯一2桁パーセント増となった。中国も引き続き回復が続いており、同10.8%増と好調で6カ月連続で増加した。中国以外のアジアも、タイが同10.9%増、インドネシアも同7.9%増と、依然として市況は厳しい中で落ち込みも一巡した格好となった。インドは稼働日が前年より少なく同3.4%減だったが、アジアトータルでは同8.3%増と5カ月連続で増加した。欧州は前年より稼働日が少ない影響などもあり、同5.0%減と5カ月連続のマイナスだった。

ダイハツ工業

 トヨタグループ傘下のダイハツも、前年の認証不正問題からの回復が進んでいる。2025年上期のグローバル生産は、前年同期比35.4%増の71万4987台と2年ぶりに前年実績を上回った。前年に認証不正で稼働停止していた国内生産が大きく伸長した。3月から4月にかけて中央発條の爆発事故による稼働停止が発生したものの、前年同期の約2.5倍となる36万5949台と4年ぶりにプラスへ転じた。

 内訳は軽自動車が前年同期比で約2.3倍の25万8001台、登録車に至っては同約3.2倍となる10万7948台まで回復した。足元でも回復基調は続いており、6月単月の国内生産は前年同月比44.0%増の7万2810台と6カ月連続のプラスとなった。

 一方、海外生産は低調だ。2025年上期は前年同期比8.3%減の34万9038台と2年連続で減少した。主な要因はインドネシアが自動車ローンの金利上昇などにより市場が低迷していることで、同12.3%減と2年連続の前年割れとなった。マレーシアも前年が新型車投入などで過去最高を記録したこともあり、同3.6%減と減少した。

 足元でも厳しい状況は変わらず、6月単月の海外生産は前年同月比11.4%減の5万799台と2カ月連続のマイナスだった。インドネシアは同22.1%減と大きく落ち込み、23カ月連続で減少した。ただ、マレーシアは好調で同6.1%増と2カ月ぶりに増加し、6月として過去最高を更新した。国内生産の回復もあり、6月の世界生産は同14.5%増の12万3609台と7カ月連続で前年実績を上回った。

ホンダ

 ホンダの2025年上期のグローバル生産は、前年同期比7.7%減の173万6381台と2年連続で前年実績を下回った。EVシフトなどにより競争が激化する中国が同23.1%減と大きく落ち込んだことが要因で、4年連続のマイナス。中国で生産する日系4社で最も大きな落ち込みとなった。このため中国では、新型EV「イエ」シリーズを投入するなど、巻き返しを図る考えだ。中国の低迷によりアジアトータルも同19.1%減と4年連続で減少した。

 主要市場の北米も、HEV人気などにより「シビック」や「CR-V」の販売は好調に推移したものの、半導体の供給改善で前年の水準が高かったこともあり、前年同期比2.0%減と3年ぶりのマイナスだった。その結果、2025年上期の海外生産は同8.9%減の141万240台と2年連続の前年割れとなった。

 国内生産も伸び悩み、前年同期比2.1%減の32万6141台と3年ぶりのマイナス。新型「フリード」の投入などもあったが、前年が半導体の供給改善で高水準だったことに加えて、「ヴェゼル」「ステップワゴン」「フィット」「ZR-V」などの登録車の販売がそろって2桁パーセント減となった。ただ輸出は、2月から埼玉製作所(埼玉県寄居町)で米国向けシビック5ドアHEVの生産を開始したこともあり、同16.2%増と伸長し、4年連続のプラスだった。

 世界的なEVシフトの減速を踏まえ、ここにきてホンダは電動化戦略の見直しを急速に進めている。もともとEVと燃料電池車(FCV)の販売比率を2030年に4割まで高めるとしていたが、2025年5月にはEVを3割以下に修正。一方で、HEVは2030年までに現在の2倍以上の220万台まで増やす方針を発表した。

 これに合わせて5月にはカナダで2028年に稼働する予定だったEV生産工場への投資を2年程度延期すると発表した他、6月には栃木県真岡市で稼働を予定していた次世代燃料電池(FC)モジュール専用工場について稼働時期の後ろ倒しと生産能力の下方修正を発表。さらにGSユアサと共同出資のブルーエナジーと新設予定の滋賀県守山市笠原地区のEV用電池工場の着工を3年程度延期するとも報道された。日系メーカーの中でもいち早くEVシフトに舵を切ったホンダは、EV販売の頭打ちを受けて大きな方針転換を余儀なくされている状況だ。

 足元の6月単月の世界生産は、前年同月比0.6%減の28万7783台と11カ月連続のマイナス。このうち海外生産は、同2.8%減の22万6979台と11カ月連続で減少した。長らく価格競争のあおりを受けて販売が低迷していた中国はようやく反転攻勢の兆しが見え始めており、同4.6%増と11カ月ぶりにプラスへ転じた。アジアトータルでも同4.9%増と14カ月ぶりに前年実績を上回った。

 一方、北米は前年が好調だった反動もあり、前年同月比5.4%減と2カ月連続のマイナスだった。国内生産は、同8.5%増の6万804台と4カ月ぶりに増加した。N-BOXの国内販売が堅調な他、輸出も米国向けが同4倍超と大幅に増加したことを受けて、同90.7%増と3カ月連続のプラスだった。

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