同一溶液から異なる結晶型の酸化チタンを選択合成する手法を確立:研究開発の最前線
岐阜大学は、80℃以下の低温で、異なる結晶型の酸化チタンを作り分ける化学合成手法を確立。この結晶制御を応用し、異なる結晶型の酸化チタン種を組み合わせた複合薄膜を作製した。
岐阜大学は2025年8月5日、80℃以下の低温で、異なる結晶型の酸化チタン(TiO2)を作り分ける化学合成手法を確立したと発表した。この結晶制御を応用し、異なる結晶型の酸化チタン種を積層した複合薄膜を作製した。
酸化チタンは、白色顔料や光触媒として広く知られる。ルチル型など複数の結晶構造を有するが、結晶化には100℃以上の高温、高圧の水熱合成法や、500℃程度の熱処理が必要となる。
今回の研究では、同じチタンの原料溶液を用いて、80℃以下で反応温度のみを制御することで、ルチル型やアナターゼ型の酸化チタンがわずか10℃の温度差で選択合成できることを発見した。実験では、塩化物イオンが結合したチタンオキソクラスターの水溶液中で反応温度を変え、反応開始から24時間のTiO2の結晶成長を調べた。
その結果、60〜70℃の温度領域を境にTiO2の結晶型が変化することが分かった。例として、60℃で平均粒径9nmのルチル型、70℃以上で平均粒径4nmのアナターゼ型を生成した。基板を原料溶液に浸漬して薄膜化する化学溶液析出プロセスにこの構造変換を応用し、60℃(一層目)と70〜80℃(二層目)の二段階連続製膜を実施して、導電性ガラス基板上のTiO2薄膜の成長を調べた。
その結果、低温領域では、ルチル層と共存してブルッカイト酸化チタンがわずかに析出された。また、ルチル/アナターゼ酸化チタン複合層は、100〜150nmの厚みに制御でき、電子移動特性の向上も確認できた。
同一溶液からルチル型とアナターゼ型の酸化チタン積層膜を得られたのは、世界初になるという。開発した酸化チタン材料は、ソーラー水分解、フレキシブル太陽電池などの次世代エネルギー材料や光触媒としての応用が期待される。
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