「データのバケツリレー」に終止符を、AVEVAの統合基盤による打開策とは:FAインタビュー(2/2 ページ)
日本の製造業におけるデータ活用の課題はどこにあるのか、産業用ソフトウェアを展開するAVEVA バイスプレジデント 日本統括の佐々木正治氏らに話を聞いた。
新しいニーズ「デジタルハンドオーバー」への対応
岡本氏 プラント建設の際に、EPC(設計、調達、建設を一貫して請け負う)事業者に対して、入札時に稼働後のメンテナンスを見据えたデータの納品を指示する「デジタルハンドオーバー」という動きもある。
どんなデータを、どんな形式で引き渡すのか、CFIHOS(Capital Facilities Information Handover Specification)など規格化もされている。そういう動きが今後他の業界でも起こる可能性はある。
例えば従来、食品業界などでは制御システムを導入するときに、訓練用のシステムも入れてほしいというリクエストがあったが、これも一種のデジタルハンドオーバーといえる。
どんな切り口で始まるのかは業界によって異なると思うが、工場やプラントを建設した時に、建てるだけではなく稼働後も見据えて付帯ツールも合わせて引き渡す、広い意味でのデジタルハンドオーバーはいろいろな業界で起こりつつあるのではないだろうか。
MONOist 親会社に当たるシュナイダーエレクトリックでは、ソフトウェアを主体とした次世代制御コンセプトとしてソフトウェアデファインドオートメーションを掲げています。AVEVAの位置付けをどのように考えていますか。
佐々木氏 われわれの必要性は、さらに今後大きくなっていくと自信を持っていえる。今後も間違いなくデータは増えていく。自動化が進めば進むほど、データをためたり、コントロールしたりする必要がある。
その時に、CONNECTも含めて、われわれが長年培った技術を基に、企業に価値を提供できるフィールドはさらに広がっていく。
われわれはデータの活用を何十年も前から訴え続けてきた。かつては“データなんか取ってどうする?”という議論もよくあったが、今は“まずはデータを取らないと”に変わってきている。やがて、集めたデータをどう活用するのかという議論が本格的になるのは間違いない。
これまでは石油化学、食品、EPC、造船などのプロセス製造のユーザーが多かったが、CONNECTをきっかけに、データ活用の需要が高まるトレンドをしっかりと捉えて、自動車や半導体、バッテリー製造、データセンターなど、データが必要になる業界に浸透していきたい。
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