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柔軟で手戻りのない生産システムに向けた手法としてのソフトウェアデファインドFAインタビュー(1/2 ページ)

製造現場を市場の変化に迅速かつ柔軟に対応させるため、従来のハードウェアを中心とした自動化システムから、ソフトウェアを基軸としたシステム構築が求められている。なぜ今、その機運が高まっているのかをロックウェル オートメーション ジャパンの吉田高志氏に聞いた。

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ロックウェル オートメーション ジャパンの吉田高志氏

 製造現場を市場の変化に迅速かつ柔軟に対応させるため、従来のハードウェアを中心とした自動化システムから、ソフトウェアで自動車の機能や性能を定義するSDV(ソフトウェアデファインドビークル)にように、ソフトウェアを基軸としたシステム構築が求められている。

 近年、ソフトウェアデファインドオートメーション(以下、SDA)を提唱する1社であるRockwell Automationの日本法人 ロックウェル オートメーション ジャパン パートナー戦略事業本部 エバンジェリストの吉田高志氏になぜ今、その機運が高まっているのかなどを聞いた(肩書は取材時点)。

生産体制を市場の変化にスピーディーに対応

MONOist なぜ今、SDAなのでしょうか。

吉田氏 SDA自体は、市場の変化に対して生産体制を迅速にキャッチアップするための仕組みとして提唱されている。

 SDAでは、ソフトウェアでPLC(プログラマブルロジックコントローラー)などの構成を変更することで、ベンダーに依存することなくユーザーが求める機能を実現できる。

 SDAを構築するための環境はアジャイルで、モジュール化もしくはコンテナ化されたアプリケーションを組み立て、製造現場に投下する。ソフトウェアとハードウェアが完全に分離されており、ソフトウェアでテストし、検証された後、ハードウェアにデプロイする構造になっている。3D環境に製造現場を再現して、テストすることもできる。

 シミュレーションツールやソフトウェアPLCの性能が向上し、仮想化環境が充実してきた。SDAを構築する土壌となるテクノロジーが出来上がってきたといえる。

 例えば、ソフトウェアPLCはSDAにおいて必須だ。なぜなら、ソフトウェアPLCがないとソフトウェアの中で検証し、完結するための仕組みが設けられないからだ。

 開発する側にとっては、自分たちがいかなるデバイスでもSDAの環境が使えることが前提条件になってくる。そうすると、SDAのコンテンツ自体はクラウドにあるべきだという考え方があり、クラウドの中にあるべきアプリケーションの1つとしては、ソフトウェアPLCが存在する。

MONOist SDAを実現するためには何が必要でしょうか。

吉田氏 考え方として「DevOps」が求められると考えている。DevOpsは、Development(開発)側とOperations(運用)側の連携を密にし、より迅速な開発プロセスを目指すITの手法だ。ただし、SDAとDevOpsを混同には注意が必要だ。

 コンテナやモジュールのディビジョンを管理しようとすると、それはDevOpsの領域になる。GitHubのような環境にアプリケーションを置いて共創できるようにしておくというのは、まさにDevOpsの世界だ。DevOpsの下にSDAというツールがあるといえる。SDAとDavOpsは密接な関係にあるが、それらをまとめてSDAだとすると、SDAが“重く”なってしまう。われわれベンダーも含めて、SDAに対してDevOpsまで含めて自分たちのソリューションを当てはめていこうとすると、オーバースペックになってしまう。

MONOist 年次イベント「Automation Fair 2024」では、今後の製造プロセスを変革するイノベーションの1つとしてSDAを挙げ、SDAをテーマにした協働ロボットもしました。


[クリックで拡大]ロックウェル・オートメーションの年次イベントの「Automation Fair」でイノベーションの1つとしてSDAを紹介

吉田氏 Automation Fairの会場では、PLCからロボットに直接信号を送って動かしていた。ソフトウェアのPLCにモジュールをいくつか用意し、それによってロボットの動作を変えていた。つまり、ロボットコントローラーが介在していなかった。

 通常ならロボットの動きを作ろうとすると、それぞれのロボットコントローラーにプログラムしなければならない。SDAでは、既にロボットの動きがティーチングされ、検証されたモジュールを用意しているため、それらを組み替えたり、別のモジュールを引き出したりすることで、ロボットの動作を縦横無尽に迅速に構築できる。


コントローラーレスでロボットを動作[クリックで拡大]

 最近、ソフトウェアPLCの多くはC#でプログラミングできるようになっている他、生成AIの活用も進んでおり、自然言語で記述すると生成AIがプログラムを出力してくれる製品も出てきている。

 生成AIがラダー言語で出力しても、ユーザー自身がラダー言語を読めず、何が書いてあるのか分からないというのは困る。そこで、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)に代表されるXRのテクノロジーなどを使い、どのように動作するのかを説明文などとしてフィードバックする。そうすれば、ラダー言語を知らなくても、出力されたプログラムがどのように動くのかが分かる。

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