柔軟で手戻りのない生産システムに向けた手法としてのソフトウェアデファインド:FAインタビュー(2/2 ページ)
製造現場を市場の変化に迅速かつ柔軟に対応させるため、従来のハードウェアを中心とした自動化システムから、ソフトウェアを基軸としたシステム構築が求められている。なぜ今、その機運が高まっているのかをロックウェル オートメーション ジャパンの吉田高志氏に聞いた。
DataOps、DevOps、SDAの連携で生産性向上のスパイラルに
MONOist DevOpsとSDAの関係性において不足している要素はありますか。
吉田氏 DevOpsではデータの取り方を明確に定義していない。ソフトウェアで構築したアプリケーションを現場に投下し、現場で生まれたデータを解析して、より良いものを追求するラインが実は存在しない。
そこに本質的に連携してくるのが「DataOps」と呼ばれるものだ。つまり、製造に関するデータをきちんとコンテキスト化してためるための仕組みだ。DevOpsとDataOpsが連携して、それをアジャイルに現場に投化する仕組みとしてSDAがある。
DataOpsを構築するためのソフトウェアとして、われわれは「FactoryTalk DataMosaix」というソフトウェアを用意している。このソフトウェアは、乱雑に置かれた現場のデータに相関関係を求めて、集約された1つのコンテキストデータに切り替えてくれる。ユーザーは現場のデータが何なのか意識することなく、DataOpsの世界が実現できる。
DataOpsには現場の全てのデータが集約され、コンテキスト化されている。何のデータがどこに入っているのかが整理されており、すぐに引き出せるようになっている。
設計側が新しい設備を設計しようとした時に、どこに気を付けなければいけないのか、何をやるべきなのかをデータから分析して、次世代の生産設備を考えていくことができる。ロックウェルは、このような構造を構築しようと考えている。
実際にDavOps、SDA、DataOpsを連携させることで、製造工程の立ち上げから運用、保守に至るまでのコストが従来と比べて50%削減した企業もある。
通常は生産技術が生産工程を設計してから現場に導入する。ただし現場では想定外の事象が起こり、手戻りが発生するケースが多い。そこで費やされる時間は即コストにつながる。そこでSDAを活用すればコストや立ち上げ期間の削減につなげられる。
ユーザーにとっては今後、競合企業がSDAを用いる可能性がある。その時に自社として従来の手法で競争力を保って市場で戦えるのかを考えなければならなくなってくる。
その中で、われわれとしては、アジャイルな生産プロセスの構築によって、ユーザーが競合よりも一歩先に出たモノづりの仕組みを作り、リードタイムを1日でも多く短縮して、市場に自社製品を迅速に展開するサポートをしていきたいと考えている。
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