AVEVAは2025年7月23日、東京都内で記者会見を開き、同年4月に同社のバイスプレジデントおよび日本統括に就任した佐々木正治氏らが今後の事業戦略を説明した。
クラウドベースのデータプラットフォームの利用拡大
AVEVAは1967年に英国で設立された産業用ソフトウェアの会社だ。現在はシュナイダーエレクトリックの100%子会社になっている。世界90カ所で事業を展開し、化学や石油、食品、製薬業界など2万社以上の企業をサポートしているという。佐々木氏は「プラントの設計から、構築、運用、保全に至るまでのライフサイクルの全てにおいてソリューションを持ち合わせている」と話す。
佐々木氏は製造業における課題として、人材不足や維持、サステナビリティへの対応に加えて、データのサイロ化を挙げた。「あるユーザーは、データの“バケツリレーだ”と表現していた。部門間でデータをバケツリレーのように受け渡していかないと欲しいデータが手に入らない」(佐々木氏)。
AVEVAでは2024年から、クラウドベースのインダストリアルインテリジェントプラットフォーム「CONNECT(コネクト)」を提供している。CONNECTは、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)やDCS(分散制御システム)、その他ハードウェアなどのデータを蓄積し、活用できるプラットフォームとなっている。データの蓄積は無料で、利活用する際に料金が発生する。
国内では2024年7月時点と比較してCONNECTのユーザー数は6倍に、ストリームアクセス数は70倍になった。AVEVA クラウドソリューション営業部 部長の村林智氏は「当初はOTデータをクラウドで扱うことに対してまだ抵抗があったが、ふたを開けてみたらユーザー数も、扱うデータ量も大きく増えた。CONNECTは完全にニュートラルでオープンなプラットフォームだ。CONNECTというクラウドのプラットフォームを使って、ソリューションを提供していくパートナーも広がっている」と語る。
佐々木氏は製造業においてAI(人工知能)の活用が加速しており、OTデータの重要性に対する認識も高まってきているとし、「AIを動かすためにはデータは重要だ。正しいデータで学習しないと、AIの精度が落ちてしまう。そこでも、CONNECTというデータのプラットフォームを持っていることが強みになる」と述べた。
AVEVA 技術営業部 部長の岡本翔太郎氏は、プラントのエンジニアリングにおいて広がっている「デジタルハンドオーバー」について説明。設計、建設時のデジタル成果物をオーナー側にハンドオーバー(引き渡す)することで、オーナー側は運転開始後すぐにデジタルツインなどに活用できる。
「決められた形式に沿って、基本設計の段階からデータを作り込んでいくことで、受け取る側は構造化されたデータをすぐに活用できる。これらはAIを使うデータ基盤にもなる。海外では最初からデジタルツインにして納入するようオーナー側から指示されるケースもあると聞いている」(岡本氏)
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