「データのバケツリレー」に終止符を、AVEVAの統合基盤による打開策とは:FAインタビュー(1/2 ページ)
日本の製造業におけるデータ活用の課題はどこにあるのか、産業用ソフトウェアを展開するAVEVA バイスプレジデント 日本統括の佐々木正治氏らに話を聞いた。
さまざまな設備から収集したデータを分析し、生産性の向上や経営の意思決定に活用する取り組みが進んでいる。ただ、国内製造業においては、データ活用の遅れを指摘する声も多い。日本におけるデータ活用の課題はどこにあるのか、産業用ソフトウェアを展開するAVEVA バイスプレジデント 日本統括の佐々木正治氏、同社 クラウドソリューション営業部 部長の村林智氏、同社 技術営業部 部長の岡本翔太郎氏に話を聞いた。
部門最適化が招くデータのサイロ化
MONOist 日本の製造業におけるデータ活用の課題をどのように見ていますか。
佐々木氏 一番の課題は、データのサイロ化が起こっていることだ。つまり、“使いたいデータはここにはなく、あそこにある”という状態だ。
われわれの顧客でもある三菱ケミカルは「データのバケツリレー」と表現していたが、「あそこにあるデータが欲しい」となった時に、部門間でバケツリレーをしてようやくデータが手元にやって来る。そして中身を見ると、バケツいっぱいにあった水(データ)がこぼれ落ちていて、“欲しかったものはこれではない”ということが現場では起こっている。
なぜデータのサイロ化が起こるのか。それは日本企業では、いい意味でも悪い意味でも部門最適が進み、部門ごとにデータがたまった箱のようなものが出来てしまうからだ。
それを避けようと、データの統合に向けて動き出そうとすると、既存のデータをどうやって移行するのかといった別のチャレンジが必要になり、スピード感が損なわれてしまう。また、そもそもデータを蓄積できていない企業もまだある。
村林氏 プロセス製造の領域ではデータを収集して、活用するという取り組みが以前から行われてきたが、ディスクリート(組み立て)製造では生産ラインが数カ月で変わることもあり、データを振り返らないケースもあった。
佐々木氏 モノづくりの過程で人の介在する領域が多いか少ないかの違いは大きい。多くの人が介在するディクリート製造では、まずはデータをためてみようというのがスタートラインになるユーザーが実際に多いだろう。
ただ、ERPなどに入っている経営データとリアルな製造データを突き合わせて、どれくらいのロスが生じているのかなどを把握し、製造、経営に生かす取り組みはグローバルで始まっている。
労働人口が減っていく中で、省人化は全業種で共通のキーワードだ。データの重要性は高まるばかりだ。
データ統合基盤「CONNECT」
MONOist その中で、日本企業はどのように勝ち筋を作ればいいでしょうか。
佐々木氏 われわれの視点で言えば、1つはクラウドベースのデータ統合基盤である「CONNECT(コネクト)」を活用することだ。
CONNECTの最大のメリットは、バケツを回さなくてもCONNECTにアクセスすれば必要なデータが手に入るようになることで、われわれがインテリジェンスプラットフォームと呼ぶ由縁になっている。
プロセス製造では、既存のわれわれのデータ収集システム「PI System」のユーザーが多く、その延長線上でCONNECTも使ってみようという話にもなる。CONNECTはPI Systemの中にたまっているデータと、PI Systemの外にあるデータを組み合わせて使うことができるからだ。
村林氏 CONNECTを使えば、データを活用してプラントや工場の最適化などを進めようとしている企業と、それに対してソリューションを提供しようとしているパートナー企業の両社をつなぐお手伝いができる。
例えば、クラウドベースでデータ活用を進める際に、自分たちでホストをしようすると手間がかかる。そういった際に、リアルタイムまたはニアリアルタイムにデータを共有できるCONNECTがちょうどいいソリューションになる。それぞれのバケツを自動的につなげられるCONNECTの機能が大きな価値になる。このように自社のためではなく、パートナー企業が彼らのユーザーのためにCONNECTを使うケースも増えていくだろう。
現状、データがたまっているケースはプロセス製造業が多く、彼らの課題にまずは寄り添う。ただ、自動車産業などでは、工場間をまたいでバリューチェーンの中でデータを共有していこうという機運が高まっている。ディスクリート製造に関しても、スマートファクトリー化に向けて、既に稼働しているさまざまなサービスをどのように連携させるかが課題になるケースがある。そこでもCONNECTは活用できるため、引き合いが多い。
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