“ソフトウェアありき”でロボットの常識を変える パナソニックHD子会社の挑戦:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
自律移動ロボットの開発負荷を低減するため、ソフトウェアベースのアプローチで変革を進めているのがパナソニック アドバンストテクノロジーだ。同社の自律移動ソフトウェアパッケージ「@mobi」の取り組みを紹介する。
建設機械や自動車のノウハウを生かし機能安全などに対応
PADの@mobiが特殊なのは、これらの共通化したソフトウェアにおいて、機能安全などの高度な機能を実装しているという点だ。「@mobiはもともと建設機械向けなど高度な領域を狙って開発したものだ。建設機械は、自律移動のニーズは高いものの、さまざまな環境を移動するため、ハードウェアの制約が非常に多い。安全面での条件も非常に多く、これらに対応するため、機能安全などに対応している。もともと自動車系のソフトウェア開発をしているノウハウを生かした」(高橋氏)。
これらの安全性や信頼性に応えるソフトウェアパッケージとなっているため、建設機械などでの採用に加え、工場向けの搬送用ロボットでの導入も増えてきている。工場を運営する企業からの引き合いに加え、機械メーカーやAMRメーカーとの協業で展開するケースなどもあるという。
この@mobiにより今後期待されているのがAGVのAMR化だ。「最近多いのが、既存のAGVをAMRとして自律移動させたいという要望だ。既存のAGVに@mobiを後付けすることでAMR化する。AGVはガイドを用意する必要があり、どうしてもライン変更などで不便な面がある。@mobiを導入することで新たなハードウェアを購入することなく、柔軟な構内搬送が行える」と高橋氏は利点について述べる。
「移動で何をやりたいか」を容易に実現する手助けに
@mobiを採用することでAMRメーカーにとって差別化が難しくなるようにも見えるが、高橋氏は「自律移動ロボットにとって移動要素は差別化につながらない一部の要素だ」と訴える。
「自律移動ロボットにとって移動する機能は主機能ではない。『移動してこれをやりたい』という目的があるはずだ。ロボットメーカーはこの主目的を果たす機能開発に注力し、移動は共通化されたものを使うという発想があってもよいはずだ」(高橋氏)
ここ数年は2倍ペースで成長を続けているというが「同じペースの成長を続けることは難しい。さらに難しいところに挑戦していく。複数ロボットの効率的な運用や相互のデータ活用など、ソフトウェアを持ち寄ってさらに共通部分を大きくするような取り組みを進めていきたい」と高橋氏は述べている。
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