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“ソフトウェアありき”でロボットの常識を変える パナソニックHD子会社の挑戦モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

自律移動ロボットの開発負荷を低減するため、ソフトウェアベースのアプローチで変革を進めているのがパナソニック アドバンストテクノロジーだ。同社の自律移動ソフトウェアパッケージ「@mobi」の取り組みを紹介する。

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 製造現場の人手不足が深刻化する中、工程間搬送などで自律移動ロボット(AMR)の導入が進んでいる。しかし、AMRは、工場の通路環境などによって、想定したパフォーマンスが発揮できない場合がある他、これらに個別で対応するカスタマイズ開発に費用がかかり、中小製造業などでは最適な形で導入できるケースは限られている。

 これらの自律移動ロボットについての課題を解決するため、ソフトウェアベースのアプローチで取り組むのが、パナソニックグループで組み込みソフトウェアの開発などを担うパナソニック アドバンストテクノロジー(PAD)だ。同社の自律移動ロボットへの取り組みを聞いた。

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PADの自律移動ロボットソフトウェアパッケージ「@mobi」を使用したAMR[クリックで拡大]

デジタル家電やカーナビ開発のノウハウを自律移動ロボットに

 PADは、パナソニック ホールディングスの研究開発部門のソフトウェア開発会社として、複数の企業が統合して生まれた企業だ。もともとは、デジタル家電やカーナビなど自動車関連のソフトウェアの開発を担い、日本国内に5拠点、500人以上が働いている。現在は車載分野、IoT(モノのインターネット)システム分野、産業分野を3つの柱としている。PAD 戦略企画室 室長の高橋三郎氏は「以前は携帯電話端末のソフトウェア開発なども担っていた。デジタル家電や自動車領域などに加え、ロボットの自動運転関連技術などのソフトウェアも開発している。パナソニックグループで車輪が付いている製品群のほとんどのソフトウェアはPADが開発している」と述べる。

 もともとはパナソニックグループ内からソフトウェアの開発を請け負うことが多かったが、徐々に領域を広げ、パナソニックグループ以外からの仕事も請け負うようになった。さらに、ソフトウェア開発だけでなく、ハードウェア開発やコンサルティング、これらの共同開発など、業務内容も広げることで、成長を続けている。現在では、パナソニックグループ外からの売り上げが7割以上を占めるようになっている。

 これらの技術力を生かし、現在注力しているのが自律移動ロボット分野だ。特に自律移動ソフトウェアパッケージ「@mobi(アトモビ)」に力を入れている。

ソフトウェアありきでロボットを作る「@mobi」の発想

 @mobiは自律移動ロボットの各種機能を実現するソフトウェアパッケージだ。センサー、コントローラーとアプリケーションをオールインワンパッケージで提供し、移動機構を持つロボットに組み込むことで簡単に自律移動を実現できる。

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AMRに搭載された「@mobi」の構成要素[クリックで拡大]

 障害物回避機能を搭載しており、リアルタイムに経路中の障害物を回避しゴールに到達させられる。3Dセンシング機能(オプション)でスロープや起伏のある地形でも高低差を考慮した自律移動が可能だ。森林やトンネルなど特徴量の少ない環境でも高精度の自己位置推定を実現する。操作においても、スマートフォン端末やPC端末などから目標地点と通過点を指定するだけで最短経路を自動で算出し自律移動する。WebAPIを公開しており、既に使用しているシステムへの組み込みも行える。

 これらを可能としたのが“ソフトウェアありき”の考え方だ。通常、自律移動ロボットの開発を行う場合、製品仕様を基に、まずハードウェアの仕様を確定し、それに合わせて、ソフトウェアを開発する。そのため、環境に合わせたカスタマイズをする際に、ハードウェアもソフトウェアも一から開発しなければならない。一方、@mobiは、自律移動ロボットにおけるソフトウェアの共通部分をパッケージ化しており、ソフトウェアを一から開発する必要がない。このソフトウェアに合わせて、ハードウェアをカスタム開発するため、狭い通路への対応や、ハードウェアの条件への対応など、個別のカスタム開発を低価格で実現できる。

 高橋氏は「自律移動ロボットそのものは大体が地図を作って、経路を計画して、それを基に移動するという同じような仕組みで動いている。ハードウェアありきの開発では全て一つ一つ作るという発想になるが、ソフトウェアありきで考えるから共通化しようという考えを取ることができ、@mobiを生み出せた」と語る。

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「@mobi」に含まれる地図作成と経路計画の機能[クリックで拡大]

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