ロボット分野に注力するパナソニック子会社、AGVや自動ピッキングの開発を容易に:組み込み開発 インタビュー(1/2 ページ)
パナソニックの組み込みソフトウェア設計子会社であるパナソニック アドバンストテクノロジー(PAD)がロボット分野向けの事業展開に注力している。2021年9月にはオンライン開催の展示会「ロボデックス」に単独で出展し、自律移動ロボット向けコントローラーパッケージや、機能安全に対応する無線非常停止パッケージなどを披露した。
パナソニックの組み込みソフトウェア設計子会社であるパナソニック アドバンストテクノロジー(以下、PAD)がロボット分野向けの事業展開に注力している。2021年9月にはオンライン開催の展示会「ロボデックス」に単独で出展し、自律移動ロボット向けコントローラーパッケージや、機能安全に対応する無線非常停止パッケージなどを披露した。
パナソニックの研究開発からソフトウェア開発部門を切り出して発足
PADは、2007年にパナソニックの研究開発からソフトウェア開発部門が切り出される形で発足した。本社をパナソニックと同じく大阪府門真市に置き、この他に大阪の梅田や名古屋、横浜、広島などに拠点を展開している。従業員数は約500人だ。
パナソニックグループ内の組み込みシステム/ソフトウェアの開発を受託するだけでなく、近年はグループ外の企業や大学、研究機関からの開発受託も増やしている。PAD 研究開発本部 イノベーション基盤開発室 第二課 課長の高橋三郎氏は「現在の内訳は、パナソニックグループ内が50%強、グループ外が50%弱。グループ外とのビジネスは新たな技術を取り込む機会にもなっている」と語る。
近年、PADの事業で中核的な役割を果たしてきたのが車載制御システム関連だ。ISO 26262に代表される機能安全や、車載ソフトウェア開発プロセスのフレームワークであるAutomotive SPICE、制御系車載ソフトウェア標準のAUTOSAR、モデルベース開発などで、同社の技術力を発揮し貢献してきた。今回ロボデックスで展示したさまざまなソリューションは、車載制御システム関連の知見やノウハウと組み込みシステムの高い技術力を融合して、新規分野となるロボット向けに展開すべく開発したものだ。
独自アルゴリズムで自律移動ロボットを高精度に制御
自律移動ロボット向けコントローラーパッケージは、工場向けで近年注目を集めているAGV(無人搬送機)などの試作開発を早期に完了できる点が最大の特徴になる。「さまざまな形状、サイズの自律移動ロボットに適用可能だ。独自開発のアルゴリズムによって、ガタガタな道の走行や車輪がクローラータイプといった特殊な条件でも高精度の制御を行える」(高橋氏)という。
この独自開発アルゴリズムは、隘路(あいろ)や障害物接近に対応する2Dナビゲーション、不整地の効率的な走行を実現する3Dナビゲーション、非車輪型移動体に適用可能なカメラベース自己位置推定などから構成されている。また、センサーとしては、LiDAR(ライダー)やカメラをはじめさまざまなものを利用できる。
さらに、自律移動ロボットにとって厳しい周辺環境にも対応できるように屋内外環境対応統合SLAMパッケージも用意した。低特徴量環境でも利用可能なマッチング性能と軽量・高速性を両立したSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)ソフトウェアで、LiDARや深度カメラなどで取得したスキャン点群と車両情報を入力として動作する。高橋氏は「車両自体の振動や不整地、車輪の回転の影響があっても自己位置を見失わずに良質な地図を作成できる」と説明する。
これらの自律移動ロボット向けコントローラーパッケージと屋内外環境対応統合SLAMパッケージは、OSやドライバ、ミドルウェア、PAD独自開発のライブラリやアルゴリズム、アプリケーションなどの各層を疎結合とするソフトウェアアーキテクチャが開発コンセプトになっている。「ミドルウェアにはROSやROS2を採用しているが、よりよいものが出てくればそれを簡単に導入できるように疎結合にしている」(高橋氏)という。
自律移動ロボット向けコントローラーパッケージの価格は、インテル製CPUを搭載する組み込みコンピュータやLiDARユニットを含めた標準パッケージで約300万円。パナソニックやスギノマシンをはじめ5社に採用されている。高橋氏は「あくまで実証実験や試作開発用のパッケージであり、量産に向けた開発受託につなげる入り口となる位置付けの商品だ」と述べる。
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