京セラが独自ツールで切削加工を可視化/監視/分析、2026年にはAIモニタリングも:工作機械
京セラは、切削加工を可視化/監視/分析するセンシングソリューション「VIMOA」のサービス提供を2025年9月から順次開始する。
京セラは2025年8月19日、切削加工を可視化/監視/分析するセンシングソリューション「VIMOA」(ヴィモア)のサービス提供を同年9月から順次開始すると発表した。センシングツールのレンタルサービス(同年9月開始)と、加工監視AI(人工知能)による量産ライン用稼働監視/不具合管理サービス(2026年春サービス開始予定)の2プランを展開する。
切削加工は、切削工具や工作機械の性能、被削材の特性、加工条件、ツールパスなどさまざまな要素が複雑に絡み合っており、加工状態を定量的にデータ化し、最適な加工工程をデジタルで決定するのは困難だった。
多くのケースで、クーラント液を吐出しながら加工するため、加工中の様子を目視で確認できず、切削音や加工後の刃先の状態から状況を推測している。ただ、経験や勘に頼る部分が大きく、作業者の技能に依存していた。
VIMOAは、京セラが開発した独自のセンシングツールを用いて、加工中の微細な振動を高感度で計測、見える化し、切削加工の状態をリアルタイムで可視化/監視/分析するソリューションサービスだ。
2025年9月に開始するセンシングツールプランでは、センシングツールや専用無線LAN、交換用バッテリーなどをセットにした、機器一式をレンタルする。利用料は14日間で9万円、30日間で16万円(いずれも税別)となっている。
2026年春に開始予定のAIモニタリングプランでは、センシングツールと加工監視AIを組み合わせて量産ライン全体をモニタリングし、稼働状況の監視と不具合の一元管理を可能にする。
センシングツールが計測したデータをAI搭載の産業用PC(IPC)に収集/解析し、加工状態をリアルタイムでモニタリングする。また、工作機械と通信連携することで、工程ごとの加工状況をリアルタイムで測定し、異常を即座に検知/管理。さらに、取得データから切削工具の摩耗度をスコアリングし、基準値(閾値)を超えた場合にはアラートで知らせる。そして、全工程の加工状態を常時監視し、いつ、どの工程で、どの工具に異常が発生したのか原因特定(トレースバック)が可能になる。
加速度センサーを採用したセンシングツールは、連続12時間使用可能なバッテリー内蔵のワイヤレス端末になっており、加工の邪魔にならず取り付けもマグネット式で簡単に工作機械内に設置できる。NC旋盤、マシニングセンタ、自動盤、複合加工機など機種やメーカー、年式を問わず、既存の機械にも取り付け可能だ。
加工振動の振幅に加え、XYZ軸方向への振動重心の偏りをリアルタイムに計測するとともに、FFT解析(高速フーリエ変換)による周波数分析の結果を表示し、異常を可視化する。22.0kHz(1秒間に2万2000回データを取得)という高いサンプリングレートにより高精度に分析し、突発的なトラブルの原因特定にも貢献する。
センシングツールのサイズは本体が92×126×30mm、センサーは15.5×14.5×40mmとなっている。また、IP56の防塵(じん)/防水性能を有している。
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