改正航空法から10年、ライセンス制度から3年……ドローンの現在地は:ドローン(2/2 ページ)
ドローン活用の伸びしろや課題はどこにあるのか、ミラテクドローンが解説した。
国家ライセンス制度が間もなく3年
2022年12月にスタートしたドローン操縦の国家ライセンスである「無人航空機操縦者技能証明制度」は、ドローンの飛行に必要な知識と能力を持つことを証明する。国家ライセンス制度は安全なドローン運用のために導入された。ドローンの活用場面が広がれば、事故やルール違反も増える懸念がある。特に、有人地帯での補助者なしの目視外飛行となるレベル4の飛行で人や建物の上空を飛ばす場合はより安全性が重視される。
ドローンが飛行できない場所としては空港周辺、人口集中地区の上空、150m以上の高さの空域などがあるが、安全性を確保して許可を受けた場合は飛行できる。また、警察や消防が緊急で作業する緊急用務空域は原則飛行禁止だ。これら以外の空域では飛行の許可は不要だ。
ライセンスを取得すれば、これまで飛行できなかった場所での飛行が可能になったり(一等無人航空機操縦士が対象)、許可申請を簡略化したり(二等無人航空機操縦士が対象)できるようになる。有効期間は3年間で、2025年12月に更新が始まる。
具体的には、一等無人航空機操縦士はこれまで航空法で禁止されていたカテゴリーIII(レベル4も含む)の飛行に必要な資格だ。カテゴリーIIIはドローンの飛行経路下に人が侵入する可能性のある場所での飛行を指し、現行の航空法では飛行が認められていない。第一種機体認証を受けた機体で、適切な運行管理体制を設けた上で申請を行い、承認が得られればカテゴリーIIIの飛行が可能になる。
二等無人航空機操縦士は、これまで許可が必要だったいくつかの条件下で飛行許可の申請が不要になる(空港周辺、高度150m以上、催し場所の上空、危険物の輸送、物件の投下、最大離陸重量25kg以上の操縦には申請が必要)。第二種機体認証を受けた機体で、飛行ルートの立ち入り管理措置や安全確保措置など運行ルールを守ることが求められる。
国家ライセンスの受講者は、農業や建設業、映像制作などの業界で増えている。一等無人航空機操縦士は社会的信用を高める目的での取得も少なくない。ただ、受講日程が初学者では1週間程度と長いため負担が大きく、2025年1月末時点での取得者数は一等無人航空機操縦士が2597人、二等無人航空機操縦士が2万628人にとどまっている。レベル4飛行が実用化しても国家ライセンス所有者が少なければ人手不足になりかねない。また、第一種機体認証を受けた機種が少なく、一等無人航空機操縦士を取得するメリットが薄いのも課題だという。
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