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改正航空法から10年、ライセンス制度から3年……ドローンの現在地はドローン(1/2 ページ)

ドローン活用の伸びしろや課題はどこにあるのか、ミラテクドローンが解説した。

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 中央大学は2025年7月7日、東京都中野区で生ビールをドローンで配送する実証実験を実施した。神田川の上空をドローン航路として活用し、駅前から100m以上離れた場所に生ビールを届けた。新たな水辺の活用のきっかけとすることも狙いの1つだった。


ドローンでビールを運ぶ実証実験の様子[クリックで拡大] 出所:中央大学

 実証実験にはミライト・ワンの完全子会社ミラテクドローンが協力した。ミラテクドローン 営業本部の細谷仁氏は「山間部や過疎地では実証実験が行われているが、都心部でドローンによる物資輸送の許可が取れた例はほとんどなかった」という。前例ができれば、都心部でのドローン配送の取り組みが広がる可能性もある。

 前例ができた一方で、「着陸場所の確保を考えると、各家庭までドローンで荷物が届く時代はなかなか来ないのではないか。ドローン専用航路を高圧電線に沿って設けるアイデアもあったが、電磁波などの影響を考えると難しい。ドローンを飛ばしやすく、飛行の道しるべになる場所の確保は簡単ではない。ドローンの管制システムもまだ課題がある」(細谷氏)という。ドローン活用の伸びしろや課題はどこにあるのか、ミラテクドローンが解説した。

日本のドローン市場の状況は

 日本では、ドローンの飛行ルールを明確化した2015年の改正航空法の施行から10年が経過した。2022年12月には、操縦者の技能証明や機体の認証に関わる国家ライセンス制度が開始された他、レベル4の飛行(有人地帯での補助者なしの目視外飛行)も解禁となった。海外と比べて安全性を重視しながら段階的に緩和してきた格好だ。ただ、世界共通の5.8GHz帯のISMSバンドが日本では使えないなど、制約も残っている。

 日本のドローン市場は順調に成長すると見込まれている。2022年度の市場規模は前年度比33.7%増の3086億円で、2028年度には9000億円を超えると試算される。成長のけん引役はドローンを使ったサービスだ。2022年度のサービス市場は同38.4%増の1587億円で、2028年度には5615億円に拡大すると見込む。

 ドローンを使ったサービスとしては、インフラ設備の点検、建設現場の測量、災害対応、農業での農薬散布、山間部や離島のラストワンマイル物流、警備、気象観測に加えてドローンショーなどさまざまなものが展開されている。これらの成長を受けて、ドローンの機体や、メンテナンス、保険、操縦スクールなど周辺サービスも拡大する見通しだ。


さまざまなセンサーを取り付けている[クリックで拡大]

 ドローンの機体は、民生用市場では中国のDJIが圧倒的な世界シェアを握っており、グローバルにみると日本企業のシェアは数パーセントで存在感は薄い。ただ、ドローンを使ったサービスは国際的にも高い評価を得ている。インフラ点検や測量、災害対応など社会課題の解決にドローンを使っていることも日本の特徴だという。

 今後の成長に向けては、国際情勢に影響を受けやすいサプライチェーンの強化やサイバーセキュリティへの対応、社会受容性の向上などが課題となる。ドローンの物流では、運ぶ荷物の重量制限や悪天候での飛行が難しいことがネックになっている。

「そもそも見に行くことが大変」をドローンで

 日本で特にドローン活用が増えていくのはインフラ設備の点検だ。ドローンにカメラを搭載することで、人間による目視の点検を代替する。危険の伴う高所作業を少なくし、作業時間の短縮にも貢献する。橋梁点検では、コストを従来の3分の1に抑えることもできているという。

 ただ、ドローンが飛ばせない範囲の点検や、ボルトのゆるみなど目視以外の点検項目には対応できないため、人間による高所作業はゼロにすることは難しい。それでも、離れた場所から双眼鏡などで確認するしかない場面や、船舶で橋の下まで移動しなければならない状況での点検に対しては、至近距離でドローンが撮影できることが大きな負担軽減になると見込まれる。

 ドローンの離着陸や充電を自動化し、使用しないときには格納しておく「ドローンドック」も登場した。これが普及すれば、操縦者なしに決まった頻度でドローンを飛ばして定期的に巡回や点検、データ収集を行うなどの活用が可能になる。


ドローンドック[クリックで拡大]

 障害物回避や経路生成、物体認識などAI(人工知能)の進化や、5G通信によるリアルタイムなデータ処理や遠隔操作の精度向上など技術革新が、今後のドローンの用途を拡大していくという。2027年ごろには完全自律型ドローンの実用化が見込まれている。2035年以降には、空だけでなく陸上や水中のドローンも含めたマルチドメインでの統合運用や、ドローン間の自律的連携などの技術も登場する見通しだ。

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