木質バイオマス燃焼灰の類型化:木質バイオマス燃焼灰資源化技術の実証開発(1)(2/2 ページ)
本連載で紹介する取り組みは、環境再生保全機構「令和3年度環境研究総合推進費 ジオポリマーコンクリートに資する木質バイオマス燃焼灰の資源化技術の実証開発(JPMEERF2021G03)」で実施した内容の一部である。第1回目の「木質バイオマス燃焼灰の類型化」では、京都大学大学院 教授の高岡昌輝氏をサブテーマリーダーとした研究グループの研究内容を紹介する。
2.燃焼灰の性状調査結果
各発電所より収集した木質バイオマス燃焼灰(飛灰、主灰)について試料の主要元素組成、重金属組成、重金属の溶出試験、粒径、化学種などの性状分析を行った。主要元素含有量は平均値で比較すると、シリコン(Si)>カルシウム(Ca)>TC(Total Carbon:炭素量)>カリウム(K)>アルミニウム(Al)>鉄(Fe)>塩素(Cl)>硫黄(S)>マグネシウム(Mg)>ナトリウム(Na)>リン(P)の順で含有量が高かった。灰の有効利用用途の筆頭であるセメント産業でのリサイクルを想定し、廃棄物焼却灰の受け入れ基準値と比較すると、S、Cl、Kの平均値が基準(それぞれ1.2%、0.1%、1.7%)を超過した。
重金属を含有した燃焼飛灰全体の約8割は、全ての元素で汚泥肥料中の有害金属類許容値を満たしたが、残りの飛灰では、ヒ素(As)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)あるいは水銀(Hg)の含有量が基準値を上回った。溶出試験においては、安定化処理無しでほとんどの飛灰は埋立判定基準を満足していた。廃木材を燃料として利用した施設から排出される飛灰は明らかに重金属が高いことが統計解析から判明した。
これらの主灰と飛灰の主要元素含有量データを基に階層クラスター分析を行い、燃焼灰を類型化した。結果を図4に示す。Ca含有量の高低により分岐があり、Caの高いクラスターはほぼ全て飛灰であった。それらの試料は、TCやSi、Cl、Na、Kなどの濃度により分岐するとともに、特定のクラスターでCFBやストーカといった炉形式が支配的になったことから、階層クラスタ分析から炉形式などの違い、組成の違いにより燃焼灰を類型化できることが可視化された。
3.資源量の見積もりとデータベース作成
上記で得られた燃焼灰の性状分析とジオポリマー利用を想定試験結果を基に、ディシジョンツリー分析を行い、木質バイオマス燃焼灰の有効利用先を判断した。木質バイオマス燃焼灰総量82万t/年のうち、肥料利用では70万t/年、セメント利用では32万t/年、ジオポリマー利用では17万t/年が利用可能だと推定された。全国20施設の炉形式、使用燃料種などの属性から、上記で求めたそれぞれの有効利用用途を割り当て、地域ごとに資源量の見積もりを行った結果が図5である。図5では、木質系バイオマス燃焼灰発生量が多い福岡県、北海道、愛知県などが比較的に各用途で使える燃焼灰が多数あることを示している。さらに、肥料用途では山口県、セメント用途では兵庫県、山口県、ジオポリマー用途では岐阜をはじめとする中部北陸に木質系バイオマス燃焼灰が多いことも見える化している。
今回のアンケート調査と提供いただいた燃焼灰の主要元素組成を広く発電事業者やリサイクラーに参照してもらい、有効利用を促進してもらうことを期待して、Googleマップの「マイマップ」機能を活用した「木質バイオマス燃焼灰」のデータベース(バイオ発電所燃焼灰マップ)を作成した。国内のFIT/市場連動型プレミアム価格(FIP)の制度で認定を受けた木質バイオマス発電所をマイマップ上に落とし込み、発生する燃焼灰の情報を掲載した。(次回へ続く)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
純国産バイオジェット燃料製造技術でSAFの生産に成功、Annex2の全項目で基準を達成
環境エネルギー、北九州市立大学、HiBD研究所は、国産特許技術「HiJET」により持続可能な航空燃料の国際規格「ASTM D7566」の「Annex2」に適合したバイオジェット燃料の製造にラボベースで成功した。木質原料の純国産SAFの認証取得へ、日本製紙など取り組みを本格化
日本製紙は、Green Earth Institute、住友商事とともに、「SAFの導入促進に向けた官民協議会」のSAF流通ワーキンググループのSAF認証タスクグループで、木質原料を用いたCORSIA適格燃料(CEF)の登録/認証を目指す「パイロット事業者」に選定されたと発表した。大興製紙が第2世代バイオエタノールの生産実証事業をスタート、SAFで活用
大興製紙は、Biomaterial in Tokyoと提携し、持続可能な航空燃料(SAF)の原料となる第2世代バイオエタノールの生産実証事業を開始することを発表した。効率のよいバイオ燃料を求めて、「木力発電」を群馬県で開始
オリックスと東京ガスは、群馬県に「吾妻木質バイオマス発電所」を立ち上げた。木質バイオマスは、隠れた再生可能エネルギー源だ。メガソーラー以上の出力を備え、定常運転が可能だ。細胞内へ物質を効率よく届ける、金属製ナノ加工穿刺薄膜を開発
早稲田大学と北九州市立大学は、微細加工技術を用いて、金属製ナノ加工穿刺薄膜を開発した。この薄膜を細胞に挿入して、細胞内へ物質を効率良く導入することに成功した。