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木質バイオマス燃焼灰の類型化木質バイオマス燃焼灰資源化技術の実証開発(1)(1/2 ページ)

本連載で紹介する取り組みは、環境再生保全機構「令和3年度環境研究総合推進費 ジオポリマーコンクリートに資する木質バイオマス燃焼灰の資源化技術の実証開発(JPMEERF2021G03)」で実施した内容の一部である。第1回目の「木質バイオマス燃焼灰の類型化」では、京都大学大学院 教授の高岡昌輝氏をサブテーマリーダーとした研究グループの研究内容を紹介する。

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 再生可能エネルギーの導入が求められる中、わが国では近年、木質バイオマス発電の設備容量が急速に固定価格買い取り(FIT)制度で認定されている。投入バイオマス量の2〜3%が燃焼灰であると見込むと、燃焼灰の発生量は現在の40万トン(t)レベルから2025年には70万tに上昇する可能性がある。

図1 木質バイオマス燃焼灰の現状
図1 木質バイオマス燃焼灰の現状[クリックで拡大]

 しかしながら、これまでわが国で生じる木質バイオマス燃焼灰がどのように再資源化、あるいは最終処分されているのかについて分析したレポートや、発生量に関する統計が整備されておらず、その実態が不明のままであった(図1)。そこで、京都大学大学院 教授の高岡昌輝氏をサブテーマリーダーとした研究グループでは、木質バイオマス発電事業者へのアンケート調査を行うとともに、全国から木質バイオマス燃焼灰を収集し、性状を分析して類型化を実施した。

1.アンケート調査

 3年間のアンケートで、炉形式ごとに気泡流動床ボイラー(BFB)で28、循環流動床ボイラー(CFB)で41、階段式ストーカ炉(SS)で9、ストーカ炉(TS)で17、ガス化炉(G)で8カ所の施設から回答を得た。このうち年間灰発生量を答えた74施設の木質バイオマス燃焼灰(3カ年平均)は合計23万5200t-wetで、灰1t当たりの有効利用の平均コストは1万5100円、廃棄にかかる平均費用は1万8700円だった。また、燃焼灰発生量のうち主灰が占める割合を炉形式ごとに分析した主灰割合の平均値はBFBが0.21、CFBが0.42CFB、SSが0.55、TSが0.43、全体では0.37だった。

 以上より、全国にある220カ所の発電施設から発生する木質バイオマス燃焼灰を推計した。結果を図2に示す。2026年度の木質バイオマス燃焼灰発生量を推計すると、主灰は32万t-wet、飛灰は50万t-wetとなり、炉形式はCFBが最も多く、燃料としては木材チップ(WC)が38%、木材ペレット(WP)が33%、パーム椰子殻(PKS)が21%を占めた。

 有効利用率を43%とすると、主灰と飛灰のトータルである82万t-wetの灰の有効利用/処理にかかる合計費用は139億円に上ると予想される。82万t-wetのうち57%が廃棄物として埋め立てられるとすると、その量は47万t-wetで、都市ごみ焼却残渣発生量は405万t-wetの12%、最終処分量267万t-wetの18%に当たる。このことから、事業コストの増大や最終処分場の逼迫(ひっぱく)と循環経済の観点から木質バイオマス燃焼灰の有効利用率向上は不可欠である。

図2 木質バイオマス燃焼灰発生量の推移
図2 木質バイオマス燃焼灰発生量の推移[クリックで拡大]

 次いで、気候変動対策を考慮したシナリオにおける木質バイオマス燃焼灰発生量の将来予測を実施した。結果を図3に示す。2020年の燃焼灰発生量(64.6万t-wet/年)を基準として、燃焼灰発生量の推移を計算した。現状において最大発電容量の施設(200MW:CFB)と同等の仕様を有す木質バイオマス発電施設が2035年以降に増えると仮定して計算すると、2050年の燃焼廃発生量(t-wet)は、1.5℃目標※1)で約160万t-wet/年程度、2℃目標※2)で540万t-wet/年になることが分かった。

※1):1.5℃目標とは世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃低く抑えるという国際的な目標で、パリ協定で定められた。

※2):2℃目標とは世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃低く抑えるという国際的な目標で、パリ協定で定められた。

図3 木質バイオマス燃焼灰発生量の将来推移
図3 木質バイオマス燃焼灰発生量の将来推移[クリックで拡大]

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