AGCが通期業績見通しを下方修正 トランプ関税でなく塩化ビニール価格下落が影響:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
AGCは、2025年12月期第2四半期の決算で、売上高は円高に伴う減収影響もあり前年同期比197億円減の9955億円となり、営業利益は原燃材料価格上昇などのコスト悪化により、同27億円減の540億円になったと発表した。
地産地消のためトランプ関税の影響は軽微
化学品セグメントの売上高は同46億円減の2859億円となり、営業利益は定期設備修繕に伴う製造原価悪化などにより、同51億円減の225億円となった。同セグメントでは、エッセンシャルケミカルズ事業で扱っている塩化ビニール樹脂の販売価格が下落したことから、前年同期に比べ減収した。パフォーマンスケミカルズ事業は、販売価格の上昇により、前年同期に比べ増収となった。
ライフサイエンスセグメントの売上高は、同1億円減の635億円だった。営業利益は、バイオ医薬品CDMO事業における固定費削減施策などの効果は発現したものの、119億円の損失となった。同セグメントでは、バイオ医薬品CDMO事業における増設設備稼働開始に伴う出荷増があったものの、前年同期に計上した受託案件精算に伴う一時収入の剥落や米国ボルダー拠点で発生した生産不具合などの減収要因により、売上高は前年同期並みだった。
宮地氏は「赤字の最大要因である米国コロラド拠点のバイオ医薬品CDMO事業から撤退し、事業譲渡することを検討している。さらに、大型のスチレンスチール培養槽を用いた生産から手を引き、AGCが得意とするシングルユースバッグ(小規模培養槽)での製造に注力することで、収益の改善を目指す。2026年度にライフサイエンスセグメント全体の黒字化を目標として掲げている」とコメントした。
併せて、通期業績見通しの下方修正も発表。売上高は前回予想比で1000億円減の2兆500億円に、営業利益は同300億円減の1200億円に、当期純利益は同230億円減の570億円に下方修正した。修正要因としては、塩化ビニール樹脂の販売価格下落、電子セグメントの半導体関連製品およびライフサイエンスのバイオ医薬品CDMOの販売数量未達を挙げている。
米国の関税の影響に関して、宮地氏は「AGCの製品は地産地消のものが多く、現地生産が基本であるため、関税の影響はそれほど大きくない」と強調した。
セグメント別の影響については、「オートモーティブセグメントでは、自動車用ガラスは輸出に不向きであるため、現地生産しており、関税の影響は大きくないとみられていた。トランプ関税についても、当初の想定よりも関税率が低くなったため、むしろ予想よりも好影響と捉えている。ライフサイエンスセグメントでは、欧州、日本、米国の三極体制で事業を進めており、各地域で案件を受託/生産しているため、関税の影響は大きくない。むしろ、地政学的なリスクが高まる中でのサプライチェーン確保という観点から、この三極体制が追い風になると考えている。電子セグメントでは、顧客の動向を通じて間接的な影響を受ける可能性はあるが、全体として大きな問題にならないと見込んでいる」と述べた。
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