散乱電波吸収の不織布 薄く軽くミリ波対応で湾曲部に使える!:TECHNO-FRONTIER 2025
大阪ガスケミカルは、「TECHNO-FRONTIER 2025」で、等方性ピッチ系炭素繊維(ドナカーボ)を用いた「炭素繊維含有不織布タイプのミリ波対応電波吸収体」の開発品を披露した。
大阪ガスケミカルは、「TECHNO-FRONTIER 2025」(会期:2025年7月23〜25日/会場:東京ビッグサイト)の構成展の1つである「第38回 EMC・ノイズ対策技術展」に出展し、等方性ピッチ系炭素繊維(ドナカーボ)を用いた「炭素繊維含有不織布タイプのミリ波対応電波吸収体」の開発品を披露した。
5つのグレードをラインアップ
ドナカーボの原料は、石炭を蒸し焼きにしてコークスを製造する際に副産物として得られるコールタールを蒸留した残渣「石炭系ピッチ」だ。石炭系ピッチを特殊な方法で加工し、黒鉛の結晶構造が発達しないようにしているドナカーボは、高い摺動性や耐摩耗性、耐熱性、低導電性を備えている。そのため、クラッチ用摩擦材や耐熱材、樹脂、ゴムコンパウンドなどで活用されている。
同社では、ドナカーボの原糸を3mm未満に細かく粉砕した粉状体「ドナカーボ・ミルド」と他の繊維を組み合わせて、炭素繊維含有不織布タイプのミリ波対応電波吸収体を開発した。ミリ波帯の電波を吸収するので、5G通信機器やドローン、車載レーダーなどに搭載することで散乱電波によるシステムの誤作動を防げる。
大阪ガスケミカルの説明員は「厚さは約3mmで、1m2当たりの重さは0.15kgと軽い他、屈曲特性にも優れており、湾曲部に使える」と語った。
同製品は1〜5のグレードをラインアップしている。グレード1は、電波吸収帯域が44GHzで、最大電波吸収性能が-20dB(=90%)、最大電波吸収性能時周波数が44GHz、主な対象は航空用無線システムとなる。グレード2は、電波吸収帯域が47G〜54GHzで、最大電波吸収性能が-25dB(=94%)、最大電波吸収性能時周波数が51GHz、主な対象は簡易無線システムだ。
グレード3は、電波吸収帯域が75G〜85GHzで、最大電波吸収性能が-25dB(=94%)、最大電波吸収性能時周波数が80GHz、主な対象は車載レーダーとなる。グレード4は、電波吸収帯域が82G〜96GHzで、最大電波吸収性能が-28dB(=96%)、最大電波吸収性能時周波数が88GHz、主な対象は新幹線の通信となる。グレード5は、電波吸収帯域が84G〜100GHzで、最大電波吸収性能が-31dB(=98%)、最大電波吸収性能時周波数が91GHz、主な対象は6Gの通信機器だ。
大阪ガスケミカルの説明員は「現状はサンプルワークが中心だが、量産化に向けて開発を進めている」と述べた。
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