曇らないメガネを作れる透明導電フィルム、透明アンテナとしても使用可能:材料技術
パナソニック インダストリーは、「TECHNO-FRONTIER 2023」で、タッチパネル用に開発した両面配線メタルメッシュ透明導電フィルム「FineX」の新たな用途として透明ヒーターや透明アンテナ、透明ディスプレイを提案した。
パナソニック インダストリーは、「TECHNO-FRONTIER 2023(テクノフロンティア2023)」(2023年7月26〜28日、東京ビッグサイト)内の「第4回 電子部品の材料展」で、両面配線メタルメッシュ透明導電フィルム「FineX(ファインクロス)」を披露した。
配線のパターンを視認できない自発光透明ディスプレイも製造可能
これまでの透明導電フィルムは、内部に設ける金属を細くすることで透明性を上げていたため、シート抵抗値が上がり、電流が流れにくくなっていた。そこで同社は、独自の製造技術「ロール to ロール 一括両面配線」を開発し、この技術により高い透過率と低いシート抵抗値を実現した透明導電フィルムのFineXを開発した。
ロール to ロール 一括両面配線は、フィルムに溝を形成した後、この溝に配線幅が2μmで従来品より厚みがある金属線を取り付けることで高い透過率と低いシート抵抗値を可能としている他、0.74という優れたアスペクト比を達成している。これにより、タッチパネルの高画質化や大型化を後押しするだけでなく、透明性を生かしてデザインフリーな透明アンテナの実現に貢献する。
FineXはロール to ロール 一括両面配線により細線化が可能なことから高い開口率(面積当たりの開口部の割合)を実現できる。そのため、FineXを導入したタッチパネルは、ディスプレイ側から出力される光の透過率が高まり、一般的なエッチング工法で製造した従来の透明導電フィルムを利用した同面積/同解像度のタッチパネルと比べ、消費電力を約4%の減らせる。さらに、ロール to ロール 一括両面配線で、送信および受信の電極を1枚のフィルムに一括で形成することにより、従来は2枚使用していたフィルムを1枚に削減できる。
これらの利点がディスプレイメーカーなどから評価されタッチパネル用途でFineXは多く採用されており、量産化もされている。近年は、ロール to ロール 一括両面配線により高い透過率と低いシート抵抗値を実現できる点を強みに、透明ヒーター、透明アンテナ、透明ディスプレイなどの用途にも対象を広げているという。
パナソニック インダストリーの説明員は「FineXの開発当初はタッチパネル用途を対象としていたが、近年は他の用途での展開に注力している。例えば、FineXをメガネのレンズに取り付けることで、レンズに曇りが生じた際にメガネ内部のデバイスでFineXを通電し発熱させることで曇りを瞬時に除去できる。FineXは高い透過率と低いシート抵抗値を可能とするため、このようにメガネ用の透明ヒーターとして使用しても、視野に悪影響を与えない。加えて、FineXは透明性を確保しながら良好なアンテナ特性を実現するため透明アンテナとしても利用できる。具体的には、低いシート抵抗の配線によりミリ波に対応し、ディスプレイや窓などに対して機能/意匠性を阻害せずに取り付けられ、金属アンテナと同等の性能を発揮する。また、微小LEDとFineXの微細配線のパターニングを組み合わせることで、配線のパターンを視認できない自発光透明ディスプレイを作れる。この自発光透明ディスプレイは、従来の透明ディスプレイと比べ、どの角度から見ても表示される文字や数字などが見やすい」と話す。
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