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ガンダムに憧れ月面を研究 月の石は地球が失った情報を記録した「メディア」:材料技術(4/4 ページ)
立命館大学 宇宙地球探査研究センター ESEC 准教授の長岡央氏は「月面での『その場探査』・サンプル採取技術開発への挑戦〜月の石は地球創成の“ナノレベルのタイムカプセル”〜」と題した講演を行った。
周回機探査データで可視化した情報とは?
なお、月面の研究で利用される情報には、米国航空宇宙局(NASA)と米国国防総省の弾道ミサイル防衛局(現・ミサイル防衛局)による共同プロジェクトとして、1994年に月へ送られた周回機「クレメンタイン」の探査データがある。
クレメンタインでは、可視/赤外領域の反射スペクトル解析から、月全球画像を取得した他、アルベド図(色や模様のみを表現するマップ)や鉄(Fe)濃度地図、チタン(Ti)濃度地図を得た。加えて、NASAのディスカバリー計画の一環として1998〜1999年に打ち上げられた月探査機のルナプロスペクターではガンマ線分光計によりトリチウムの全球分布をレポートした。
一方、日本が実施した「かぐや計画」は、2007年9月14日に月周回機のかぐやを打ち上げ、元素や鉱物の分布、表層構造、重力場、磁場を対象に、同年12月〜2009年6月に月面を観測した。かぐやでは、元素分布の取得でガンマ線分光計(GRS)や蛍光X線分光計(XRS)を活用し、鉱物分布の獲得でマルチバンドイメージャーやスペクトルプロファイラー(SP)を用いて、地形の撮影で地形カメラを使った。
長岡氏は「かぐやのガンマ線分光計で得られたデータを分析することで、月面における酸化カルシウムや酸化鉄、カリウム、トリウム、ウランの分布を可視化した」と述べた。
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