体外の培養子宮で着床と発生に成功:医療技術ニュース
大阪大学は、体外で培養したマウス子宮上で体内と同程度に忠実な着床と発生を再現することに成功した。また、体外子宮上で着床不全の病態を模倣し、その改善法も明らかにした。
大阪大学は2025年7月7日、体外で培養したマウス子宮上で体内と同程度に忠実な着床と発生を再現することに成功したと発表した。また、体外子宮上で着床不全の病態を模倣し、その改善法も明らかにした。
研究グループは、PDMSという酸素透過性を持つ素材を用いて、効果的に酸素供給しつつ胚を子宮内膜に固定する体外子宮システムを開発した。胚盤胞を単離した子宮内膜片と共培養し、着床が起きる側から酸素供給することで、胚は体外子宮に着床し、その後発生が拡大する。
体外子宮システムは、約95%という高い再現性で着床を誘導した。また、胚盤胞の構成成分である壁側栄養膜細胞の接着や栄養芽細胞の浸潤、栄養芽巨細胞への分化などの生体内での着床過程が忠実に再現された。胎児成分のエピブラストや将来胎盤となる胚体外外肺葉の形成など、発生の兆候も示した。
さらに、子宮の分泌腺や免疫細胞、血管などの子宮内環境を保持したまま培養することに成功している。
体外子宮システムは、着床因子COX-2の誘導も忠実に再現した。そこで、体外子宮でCOX-2の機能解析ができるかを検証した。その結果、網羅的遺伝子解析から、COX-2は下流シグナルを通じて胚の栄養膜細胞のAKTを活性化し、着床を促進することが示された。マウス個体を用いた検証で同等の結果が得られたことから、体外子宮システムを用いた検証が生体を使った研究と同等の信頼性を持つことが示唆された。
これまで着床は、実験動物でも観察や介入が難しく研究が困難だった。今回の成果が、生殖補助医療(ART)における反復着床不全の病態解明や着床診断技術の開発、着床補助技術の開発につながることが期待される。
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