炭素繊維複合材料の世界市場調査結果、2050年は2024年比2.6倍に:製造マネジメントニュース
富士経済は、航空機や自動車などに使用する、炭素繊維複合材料の世界市場に関する調査結果を発表した。2050年の市場規模は、2024年比2.6倍の8兆6864億円に達すると予測する。
富士経済は2025年7月8日、航空機や自動車などに使用する、炭素繊維複合材料(CFRP、CFRTP)の世界市場に関する調査結果を発表した。2050年の市場規模は、2024年比2.6倍の8兆6864億円に達すると予測。CFRPは航空機や風力発電ブレードで、CFRTPは自動車のバッテリーボックスなどで採用が進むと見込まれる。
調査は、炭素繊維に熱硬化性樹脂を染み込ませたCFRPと、熱可塑性樹脂を染み込ませたCFRTPを対象に実施した。現在は、CFRPが大部分を占めるが、CFRTPは製造加工時間の短縮や加熱で軟化して冷却により硬化することから、リサイクル性が高いという特徴を持つ。
CFRPは、2024年には航空機用途が伸長した他、中国を中心にEV(電気自動車)での採用が進み、市場が大幅に拡大した。航空機や風力発電ブレード、スポーツおよびレジャー用品向けも伸びており、2025年もこの傾向が続くとみられる。さらに、航空機や風力発電ブレードなどを軸として、2050年に向けて採用が増えると予測。圧力容器やスポーツ、レジャー用品でも、需要増加が見込まれる。
CFRTPの市場規模はまだ小さいものの、電機電子向けや自動車などの生産ラインで使用される摺動部品と静電部品向け、航空機向けは堅調だ。2050年までには、自動車のホイールやバッテリーボックスなどで普及が見込まれ、市場は拡大を続けると予想される。
自動車用途では、中国のEV増産に伴うバッテリーボックスでの採用が中心だが、今後はホイールでの採用増加が期待される。これにより2050年の市場は、2024年比3.2倍になる見込みだ。航空機では、シングルアイル機やリージョナルジェットの需要増加とともに、炭素繊維複合材料の採用率上昇が期待できる。
圧力容器は、強化材に炭素繊維複合材料を使用する、車載用天然ガス圧力容器や燃料電池車の水素タンク、車載および輸送用CNGタンクなどを対象とする。中長期的には、ディーゼルエンジンのトラックやバスがFCVやCNG車に代わる可能性が高いこと、ドローンや鉄道車両など自動車以外でも水素タンクの需要が伸び、2050年は2024年比4.2倍を予測する。
リサイクル炭素繊維と端材利用のCFRP、CFRTPは、2050年には2024比4.9倍の725億円を予測する。CFRPの加工端材のリサイクルが中心となっており、ICトレーなどの静電対策部品、自動車の内装部品や構造材などさまざまな用途で利用されている。特に今後は、熱可塑性を持つCFRTPの加工端材の再利用が市場拡大につながると予想される。
CFRPおよびCFRTPの成形加工装置は、風力ブレードの製造増加などに伴う炭素繊維複合材料の採用により、需要が高まっている。2050年の市場規模は、2024年比2.3倍の422億円と予測する。CFRP用はオートクレーブやRTM装置、CFRTP用はプレス機や射出成形機で伸長が見込まれる。
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