硫化物系固体電解質の世界市場規模は2045年に164倍 EV向け量産が拡大の合図:製造マネジメントニュース
富士経済は、固体電解質の世界市場に関する調査結果を発表した。2020年代後半から市場が拡大し、2045年には硫化物系が2024年比164.2倍の7553億円、酸化物系が同8倍の4022億円に成長する見込みだ。
富士経済は2025年6月17日、固体電解質の世界市場に関する調査結果をまとめたレポートを発表した。硫化物系と酸化物系の固体電解質を対象に、市場の現状と将来展望を分析した。
今回のレポートによれば、固体電解質は、次世代の電気自動車(EV)用電池として注目される全固体電池に使用され、性能を左右する重要な材料だ。2025年における固体電解質の世界市場は、硫化物系が91億円、酸化物系が634億円になると見込まれる。
硫化物系全固体電池は、現状では実用化されておらず、サンプルや試験用出荷にとどまっている。2027年から2030年にかけて、自動車メーカーや電池メーカーによるEV向け硫化物系全固体電池の量産が計画されていることから、市場が拡大するのは2020年代後半からと考えられる。
また、2030年以降は、新しい正極、負極活物質の導入や冷却システムの簡略化が進むことで電池が高容量化し、急速充電性能も向上するなど、硫化物系全固体電池の性能改善が予想される。これによりEVなどへの採用が増え、硫化物系固体電解質の需要も高まる見込みだ。2045年には固体電解質の世界市場規模が2024年比164.2倍となる7553億円に達すると分析している。
一方、酸化物系固体電解質は、中国メーカーによる疑似固体電池向けの量産で、既に市場が拡大し始めている。中国の電池メーカーは電動バイクやEVに疑似固体電池の搭載を進めており、日系メーカーによる全固体電池の開発進展も見込まれることから、2030年以降も同市場は継続して拡大すると考えられる。2045年における酸化物系固体電解質の世界市場は、2024年比8倍の4022億円になる見込みだ。
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