半導体後工程製造装置事業で売上高1000億円へ、ヤマ発は先端半導体に集中投資:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ヤマハ発動機とヤマハロボティクスホールディングスは、2025年7月1日に設立するヤマハロボティクスにおける半導体後工程製造装置事業の中長期経営計画の概要を説明した。
先端半導体向けの技術開発に集中投資
現在の半導体後工程製造装置事業の売り上げは344億円(2024年度)。2027年度に500億円以上、2030年代初めに年間1000億円の売り上げという目標達成に向け、“コア領域(一般半導体)で稼ぎ、成長領域(先端半導体)で伸ばす”という方針を掲げ、ヤマハロボティクスの設立に加えてさまざまな施策を進める。
一般半導体では、面積生産性を向上させた高速ワイヤボンダー「UTC-RZ1」、マルチプロセス対応モールディング装置「MS-Rシリーズ」を投入する。「これら新しいプラットフォームの製品を軸に、さらに競争力のあるソリューションを提供する」(中村氏)。
先端半導体では生産プロセスの進化が進んでおり、丸いウエハーではなく、四角いパネル型の素材を使って生産効率などを高める、パネルレベルパッケージが注目されている。また、HBM(高帯域幅メモリ)の多段化や、光回路と電子回路を組み合わせた光電融合デバイスなど、新しいプロセスに対応したソリューションが求められている。
「こうしたニーズに応えるため、成長分野である先端半導体向けの技術開発に集中投資する。われわれのフリップチップボンダはHBMや先端半導体で既に多くの実績があるが、次世代半導体に対応するべく、さらなる高精度化と大型パッケージ対応を進める。モールディング装置のMS-Rシリーズや『WCM』は強みの精密金型技術により、先端半導体を高速、高品質に製造できる。大手顧客での実績を基に、最新のパネルレベルパッケージや新プロセスに対応した次世代ソリューションの開発を進めていく」(中村氏)
シリコンのウエハー上に光の回路を作るシリコンフォトニクスも、次世代半導体や光通信に活用が期待されている。「研究用の装置に加え、量産用のソリューションを開発していく」(中村氏)。
新領域では、将来の技術開発や新事業開発に向けた取り組みを進める。ヤマハ発動機は、半導体製造装置、材料、基板メーカーらで構成される次世代半導体パッケージ実装技術開発コンソーシアム「JOINT2」や、半導体の後工程自動化を目指す「半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS)」に参画している。
産業技術総合研究所と共同で、バンプ(接続電極)を用いずに、金属電極を形成したチップ同士を直接接合するハイブリッドボンディング(次世代接合)の開発も行っている。洗浄、表面処理、それらの検査なども必要とされるため、ヤマハロボティクスとして関連装置を開発する可能性もあるという。「一般半導体向けの2つのプラットフォームの製品で安定収益を得る。それが1段目のロケットとなる。2027年までの中期では、2段目のロケットとして先端半導体に力を入れて伸ばし、2030年に向けて3段目のロケットとして新領域における新しいソリューションにより1000億円に近づけていく」(中村氏)。
また、ヤマハロボティクスとしては、技術研究本部の設置や人材採用の強化、そしてベトナムの海外開発拠点の拡大などにより、開発をスピードアップさせる。先端半導体装置を製造している長野(千曲市、アピックヤマダ)、東京(武蔵村山市、新川)の生産能力を広げ、海外工場の活用も拡大する。台湾やインドなど海外拠点の体制強化も進める。「半導体市場は成長領域であり、勝てる市場にしっかりと投資していき、ヤマハ発動機にとってロボティクス事業をランドモビリティに次ぐ第2の柱にしていきたい」(江頭氏)。
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