ヤマハ発動機がSMTラインの新自動化コンセプト、AMRがフィーダーを搬送して補給:スマートファクトリー
ヤマハ発動機は「JISSO PROTEC 2024」において、SMTの新たなコンセプト「Perfect Fit Automation」に基づいた、SMT生産フロアの自動化コンセプトのデモを行った。
ヤマハ発動機は電子部品実装技術の展示会「JISSO PROTEC 2024(第25回 実装プロセステクノロジー展)」(2024年6月12〜14日、東京ビッグサイト)において、SMT(表面実装技術)の新たなコンセプト「Perfect Fit Automation」に基づいた、SMT生産フロアの自動化コンセプトのデモを行った。
EV(電気自動車)や小型化する電子機器などにより、SMTの需要は伸び続けている。小型化、高密度化、高機能化、多様化とともに、製品サイクルの短期化も加速。高速大量生産から多品種少量生産までニーズが多様化する一方で、少子高齢化の影響により人材やエキスパートが不足している。
Perfect Fit Automationでは、SMT生産工程の上流から下流までの全てのプロセスで、ユーザーの現場の状況に応じた最適な自動化を提案する。プロセスごとに自動化の提案を行うことで、多種多様な設備やシステムと適切に連携させ、工場全体を最適化するスマートファクトリーの具現化を目指す。
ブースでは、Perfect Fit Automationの将来像として、共通段取りにより複数品種を生産するラインを想定し、部品補給作業を一部自動化したデモを紹介した。デモとともに、自動部品補給に対応した「自動化マウンター」、補給予定の部品が取り付けられたフィーダーを事前に蓄え次の補給に必要なフィーダーを自動的に出庫する「デリバリーステーション」、これらの間でフィーダー搬送および交換作業を行うAMR(自律搬送型ロボット)「チェンジャー」と自動充電するための充電器などを参考出品した。
まず、デリバリーステーション内で、部品が入ったカセットフィーダーが格納エリアから出庫エリアに移動。それに合わせて、チェンジャーが自律走行しながらデリバリーステーションに向かい、ドッキングすると2本のフィーダーがチェンジャーへと出庫される。
カセットフィーダーを受け取ったチェンジャーは補給が必要なマウンターに移動する。チェンジャーには2つのLiDAR(Light Detection And Ranging)が搭載されており、周囲の環境を認識しながら自律走行。マウンター側には位置合わせ用のマーカーが付いており、チェンジャーはそのマーカーを検出して、位置合わせを行いながらマウンターにドッキングする。その際にマウンター側の高さもセンサーで検出して、それに合わせて筐体も伸ばす。空になったカセットフィーダーをマウンターから受け取り、補充用のカセットフィーダーを差し込む。
その後、デモではチェンジャーがデリバリーステーションに戻り、回収したカセットフィーダーを格納すると自ら充電器に接続したが、実際には、複数のマウンターで自動補給を行うことを想定している。これによって、作業者がマウンターまでフィーダーを運び、部品補給を行う必要がなくなる。
「省人化のニーズは高い。実装部品の自動補給以外にも、自動化トレー供給ユニットや、自動テープごみ収集ユニット、マスクチェンジャーの準備を進めていく」(ヤマハ発動機の説明員)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- FA難民を救え! サイバーとフィジカルだけじゃないヤマ発のスマート工場【前編】
二輪車大手のヤマハ発動機は、スマート工場プロジェクトでPoCから前に進めないという苦い経験を経て、実際にモノづくりを行う現場の人々にとって実利の得られる形で工場をスマート化する取り組みを進めている。ヤマハ発動機 生産技術本部 設備技術部長の茨木康充氏に、プロジェクトを推進の考え方や仕掛けについて聞いた。 - FA難民を救え! サイバーとフィジカルだけじゃないヤマ発のスマート工場【後編】
二輪車大手のヤマハ発動機は、実際にモノづくりを行う現場の人々にとって実利の得られる形で工場をスマート化する取り組みを進めている。前編に続き後編では、同社がスマート工場に向けて開発を進めている4つのキーテクノロジー「自働搬送」「自働検査」「自働作業」「状態監視+トレサビ」について紹介する。 - ヤマハ発動機が目指す「理論値生産」への道
MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパンの、アイティメディアにおける産業向けメディアは2021年12月8〜9日、オンラインでセミナー「MONOist IoT Forum 2021 Digital Live」を開催した。本稿では特別講演に登壇した、ヤマハ発動機 設備技術部 部長の茨木康充氏による「ヤマハ発動機の考える『人』が主役のスマートファクトリ」と題した特別講演の内容を紹介する。 - スマート工場は“分断”が課題、カギは「データ取得」を前提としたツールの充実
工場のスマート化への取り組みは2020年も広がりを見せているが、成果を生み出せているところはまだまだ少ない状況だ。その中で、先行企業と停滞企業の“分断”が進んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対応なども含めて2021年もスマート工場化への取り組みは加速する見込みだが、この“分断”を解消するような動きが広がる見込みだ。 - スマート工場化は次段階へ、AI活用の定着とアプリケーション拡大に期待
スマート工場化の動きは着実に広がっている。その中で2022年はAIを活用した「アプリケーションの拡大」をポイントにデータ活用のさまざまな形が広がる見込みだ。