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横河電機が目指すプラント操業の自律化、10世代目のCENTUMで何をかなえるかFAニュース(2/2 ページ)

横河電機は、発表から50周年を迎えた分散形制御システム(DCS)「CENTUM」のこれまでの歩みを振り返るとともに、10世代目となる「CENTUM VP リリース7」のコンセプトおよび同日販売を開始した「リリース7.01」の概要を発表した。

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現代のプラント操業の4つの課題、自律化への3つのステップ

 1つ目は、より高いレベルの収益/品質の改善だ。プラントで生成される製品に対して市場での競争が激化している。現場ではコストダウンをしつつ、高品質かつ短納期に製品を提供しなければならなくなっている。

 2つ目は、有形/無形資産の担保/継承だ。生産設備が老朽化する中で保全をし、性能を担保しなければならない。また、熟練技術者が相次いで引退し、そのノウハウと人的リソースの継承、維持が難しくなっている。

 3つ目は、セキュリティリスクの高まりだ。さまざまな産業がサイバー攻撃の対象になり、安心安全なプラント操業への負担が増している。4つ目は、グローバルで進む環境規制の強化とサプライチェーンの変化となっている。

横河電機の山本光浩氏
横河電機の山本光浩氏[クリックで拡大]

 横河電機 デジタルソリューション統括本部 システム事業部長の山本光浩氏は「これらは、個別に発生しているのではなく、複雑に影響し合う環境の変化があり、プラント操業の課題解決がより困難になってきているという現状を示している」と話す。

 そこで必要になってくるのが、「自身が変化に対する学習能力や適応能力を持ち、人間の介在なしに最適かつ安全、安心なプラント操業」(山本氏)となる。

 ただし、一足飛びにできるとは考えていない。横河電機は、3つのステップでプラントの自律化を目指す。

 最初のステップはデータを駆使した操業支援だ。多くのプラント操業は既に自動化されているが、そこから生まれるデータがまだ分散している。それらを収集して高品質に統合することで、信頼できる適切な判断材料を提供。データを駆使した操業を支援する。

 2番目のステップは未来を見渡す操業体験だ。データを活用することで、現在の操業状況を的確に把握し、未来のシナリオが提示できるようになる。その未来のシナリオを見渡し、未来を選択できるようにする。

 3番目のステップが、自律化されたプラント操業となる。まだ見えない変化を予知し、人の介在なしに自律的に最適化を実現。万が一の際にも、極力、人が介在せずに自律的にプラントの定常復帰が行われる世界となる。

 そこで、10世代目となるCENTUM VP リリース7では、操業の自律化促進をテーマに、「制御/操作監視範囲のさらなる拡大」「プロセスの状態把握による予兆検知」「経験知とAI技術を融合したプラント操業」という3つのコンセプトを掲げている。

 制御/操作監視範囲のさらなる拡大では、プラント内に点在する幅広いデータをセキュアに集約することでプラントの全ての状態を見える化し、自動化運転の範囲を拡大する。

 プロセスの状態把握による予兆検知では、操業に関わるプロセス固有の事象を抽出、同定し、期待値からの逸脱を予兆検知することで、オペレーターが変化を先読みしてアクションできるようにする。

 経験知とAI技術を融合したプラント操業では、人の持つ知見や操業ノウハウを駆使した未来シナリオを提示することで、オペレーターの的確な判断を支援。また、自律制御AIがオペレーターの操作を代替することで長期安定操業を実現する。

 リリース7.01ではそれに向けた基盤整備を図っている。

 データを駆使した操業を実現するためには、重要インフラのセキュリティに十分に配慮する必要がある。制御システムを構成するコンポーネントのサイバーセキュリティならびにシステム全体としてのセキュリティレベルを強化するため、業界のセキュリティベンチマークに対応した。

 また、CENTUMにOPC UAクライアント機能を追加した。OPC UAは異なるメーカーの機器同士がデータ交換できるようにする、プラットフォームに依存しない標準規格だ。OPC UA接続によりCENTUMの制御および操作監視の対象となるプラント内設備、機器を拡大した。

 その他、プラント内に点在する各システムを統合し、操業の全体最適を図るために、CENTUMに関わる複数のエンジニアリングデータベースを結合してテストする機能を提供。エンジニアリングを高品質かつ高効率に行えるようになり、新規および既存プラントの早期立ち上げ、再稼働に貢献する。

初代のCENTUMをはさむ横河電機の竹岡氏(左)と山本氏(右)
初代のCENTUMをはさむ横河電機の竹岡氏(左)と山本氏(右)[クリックで拡大]

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