ダイハツ「ムーヴ」が全面改良、長期保有のユーザーをスライドドアで動かす:車両デザイン(2/2 ページ)
ダイハツ工業は軽自動車「ムーヴ」を約10年ぶりにフルモデルチェンジして発売した。同社として国内では2022年7月発売の「ムーヴ キャンバス」以来の新型車となる。2023年4月に海外で認証不正行為が発覚して国内にも問題が広がり、新型車の投入が止まっていた。
スライドドアの採用には、乗り換えずに長期で保有するハイト系ユーザーを動かす狙いもある。ハイト系は保有台数ベースで国内1000万台の市場だという。新車販売の軸がスーパーハイト系に移行しているが、ハイト系の市場は動きが鈍い。「ハイト系はダイハツだけでなく他社製品もバランスがよく、不満がないので乗り換えないのではないかと見ている。これまでのハイト系をそのままフルモデルチェンジしてもハイト系のユーザーには動いてもらえないだろう。スライドドアや最新の安全装備などで利便性が上がったクルマを届け、ハイト系のユーザーを動かしていきたい」(戸倉氏)
ムーヴらしいチューニングを施す
デザインコンセプトは「動く姿が美しい、端正で凛々しいデザイン」で、軽快さや躍動感、凛々しく端正な印象を演出するエクステリアにした。インテリアは、小さいクルマらしくインタフェースをシンプルにまとめた。オーディオの位置を低く設定して視界を広く確保し、安心して運転できる見晴らしのよさを目指した。シートは落ち着いた色合いや素材で仕立ての良さを演出し、居心地の良い空間とした。
後席スライドドアは、ニーズの高まりを受けて全車に採用する(「RS」は両側、「G」とXは左側が標準装備)。降車時に予約しておくとクルマに戻った時に自動で解錠してドアを開けるウエルカムオープン機能や、施錠を予約してスライドドアが閉まり切るのを待たずにクルマから離れることができるタッチ&ゴーロック機能も備える
プラットフォームには、「タント」や「タフト」、ムーヴ キャンバスと同じ最新の「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」を採用した。軽量高剛性な車台、素性を磨いた「KFエンジン」、ターボ車に設定する「D-CVT」により、既存のムーヴから基本性能を大幅に進化させた。ムーヴ専用のチューニングも施し、「毎日の移動だけでなく遠出もしたくなる軽快な走行性能」を目指した。
アクセルスロットル特性の最適化により軽快な走りを実現した他、ターボエンジンとD-CVTによる力強い加速性能を持たせ、ステップシフトによってリニアな加速感を演出する。低速から高速までストレスのない加速性能を目指した。また、バネ定数とショックアブソーバー特性の適合、ステアリング特性の最適化などムーヴ専用の設定により、上質な乗り心地と思い通りに曲がれる操縦安定性を実現した。新型ムーヴのWLTCモード燃費は2WDのNAエンジンが22.6km/l、ターボエンジンが21.5km/lで、いずれも従来モデルから10%改善した。
ムーヴ キャンバスから搭載しているADASの「スマートアシスト」は、衝突回避支援、認識支援、運転負荷軽減、駐車支援など17種類の機能を搭載した。最新のステレオカメラの搭載により、衝突警報や衝突回避支援ブレーキが夜間の歩行者や二輪車の検知に対応した。検知距離や対応速度も向上させた。ブレーキ制御付き誤発進抑制機能も採用し、踏み間違い時の急発進を抑制する。アダプティブクルーズコントロールも採用した。また、後付けも可能なディーラーオプションの装備として、急アクセル時加速抑制システムやブラインドスポットモニターを用意している。RS/Gグレードには電動パーキングブレーキが標準装備となり、オートブレーキホールド機能が利用できる。
最新の「ダイハツコネクト」では、スマートアシストの作動回数を過去7日分表示できる。安全運転を促進する「スマアシレポート」の他、ドアロック忘れやハザードランプの消し忘れをスマートフォンに通知する「うっかりアシスト」も新たに設定した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
最近の軽自動車は高過ぎる? 値上がりの理由お答えします
最近の軽自動車って価格が……と思ったことはありませんか。「昔はこのくらいの値段で売っていたのに」「モデルによっては普通車よりも高額になるなんて」と常々感じる方もいらっしゃるでしょう。本当に軽自動車は高過ぎるのか、具体的な数字を基に検証します。ダイハツの認証不正の経緯まとめ読み
MONOistに掲載した主要な記事を、読みやすいPDF形式の電子ブックレットに再編集した「エンジニア電子ブックレット」。今回は、ダイハツ工業の型式指定申請の不正行為の経緯をまとめた「ダイハツの認証不正の経緯まとめ読み」をお送りします。ダイハツがポール側面衝突で不正、「社内に右側の試験データなし」
ダイハツ工業の認証手続きで新たな不正が判明した。無理解な経営陣の「短期開発」が生んだ、ダイハツ64車種の不正
ダイハツ工業は同社が開発し、国内外で生産中の全ての車種の出荷を自主的に停止すると発表した。生産を終了したものを含め、64車種とエンジン3機種で型式認証の試験での不正行為が確認されたためだ。ダイハツとトヨタが今後の小型車開発の方針を発表
ダイハツ工業とトヨタ自動車は海外事業の体制見直しなど今後の方向性について発表した。2023年4月以降に明らかになった国内外の認証不正を受けて、トヨタ自動車が小型車の開発から認証まで責任を持ち、ダイハツが開発を担う体制に変更する。ダイハツの新型軽自動車が狙う、「親と同居する30代以降の独身女性」の市場とは
ダイハツ工業は2010年から2014年にかけて、軽自動車市場での女性シェアを10ポイント落とした。子どものいない女性に向けたラインアップはフルモデルチェンジを1度も実施していない「ムーヴ コンテ」「ミラ ココア」しかなく手薄になっていた。新型軽自動車「ムーヴ キャンバス」でシェア回復を狙う。新型「ムーヴ」が目指す軽自動車の本質は「低価格・低燃費」
ダイハツはハイトワゴンタイプの軽自動車「ムーヴ」のフルモデルチェンジを発表。軽自動車の国内シェアをめぐり、ライバルのスズキを追う立場いるダイハツ。注目が集まった新型ムーヴには、ダイハツの次世代の軽自動車プラットフォームとなる可能性がある技術が投入された。