ドアトリムの材料をオレフィン系に統一することを提案、リサイクルしやすく:人とくるまのテクノロジー展2025
トヨタ紡織は「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」において、素材をオレフィン系材料に統一したドアトリムを展示した。ドアトリムで使用量の多いオレフィン系の材料に統一することで、リサイクル率向上に貢献する。
トヨタ紡織は「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(2025年5月21〜23日、パシフィコ横浜)において、素材をオレフィン系材料に統一したドアトリムを展示した。ドアトリムで使用量の多いオレフィン系の材料に統一することで、リサイクル率向上に貢献する。
自動車は1台当たり30kgの樹脂が使われており、樹脂の使用量が特に多いのがドアトリムだ。現在のドアトリムはさまざまな素材が併用されている。アッパートリムには溶剤系接着剤、ミドルトリムとアームレストにはPVC(ポリ塩化ビニル)表皮やポリウレタンフォーム、ゴム系接着剤などが、加飾には塗装されたポリカーボネートABS基材が使われている。内部の防音部品はPET(ポリエステル)繊維、固定するクリップはPOM(ポリアセタール)基材となるなど、オレフィン系以外の材料が少なくない。
使用済み車両を処分する段階ではオレフィン系材料はリサイクルできるが、こうした複合材は分別が難しいことから廃棄されている。オレフィン系材料はすでにドアトリムに使用する材料の63%を占めるので、ドアトリムの材料を統一すれば廃棄を減らすことができ、分別が不要になればリサイクルもしやすくなる。
リサイクルのしやすさを重視したドアトリムは、自動車メーカーからの要請ではなく、サプライヤーとしての独自の提案だ。「CO2排出を減らすという目的に向けて、リサイクル材を活用するだけでなく、リサイクルしやすさも提案していきたいという思いで取り組んでいる」(トヨタ紡織の説明員)。
オレフィン系材料は熱が加わると変形しやすいという弱点がある。これまでオレフィン系材料を使っていなかった部位に使用した場合にどのように変形するかなど高温下の影響を今後検証する。また、オレフィン系材料は柔らかさを出しにくいという短所もあり、オレフィン系材料に置き換えるとこれまでウレタンフォームを使っていた部位は硬めの感触になってしまう。「その硬さを自動車メーカーがどう評価するか。肘をかけるには問題ないか、もっと柔らかさが必要なのか、要望を踏まえてチューニングしていく」(トヨタ紡織の説明員)。
加飾として求められる耐候性や傷の目立ちにくさも社内で確認した。金属風の加飾であれば、キラキラ感を出すアルミフレークの大きさや添加量を調整して現行材料の見た目に近づけている。
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