新生パナソニックオートはコックピットHPCとキャビンUXを柱に高収益化を目指す:コックピット/車載情報機器(3/3 ページ)
パナソニック オートモーティブシステムズが新経営体制の事業方針を説明。親会社となった米国資産運用会社のApolloの下で、経営スピードの向上や生産性/コスト競争力の強化を図りつつ、「コックピットHPC」と「キャビンUX」をコア事業として企業価値を高めていく方針である。
「コックピットHPC」と「キャビンUX」がコア事業に
PASが今後の事業戦略を進めていく上で重視している自動車市場の動向となるのが、自動車の「知能化」と「多様化」だ。
AI(人工知能)や音声認識技術の進化により、自動車は単なる移動手段を超えてユーザーと対話できるパートナーへと変わりつつある。この自動車の知能化を支えるのがソフトウェアであり、自動車の機能向上が図られるSDV(ソフトウェアデファインドビークル)化も進展していくことになる。
また、自動運転技術の実用化によって運転形態の柔軟化や運転観の変化が起こり始めており、カーシェアリングやモビリティサービスなど新しい自動車の使用形態も広がり始めている。このように多様化する市場環境下では、自動車を利用するユーザー一人一人に寄り添った価値提供が求められるようになる。
永易氏は「知能化と多様化が進むことで、自動車の差別化ポイントは従来の走る、曲がる、止まるといった走行性能から変化しており、移動時の体験価値や快適な車内空間を求めるUX価値の向上へのニーズが高まっている。そこで、これまで培ってきたくらしや人に寄り添う技術を生かして、コックピット領域と車内空間で心地よい移動を創り出していくことに貢献していきたい」と述べる。
3つ目の経営アジェンダとなる企業価値の向上は、コックピット領域と車内空間をコアとして事業戦略を推進していくことになる。
コックピット領域では、SDV化が進む中で自動車のアーキテクチャがソフトウェアを中心に、CDC(コックピットドメインコントローラー)を経て統合HPC(高性能コンピュータ)化に進化するトレンドを捉え、車載のセンサーやアクチュエーターとクラウドの双方と連携する「コックピットHPC」を開発する。現在、コックピット領域の売上高は約2800億円だが、10年後の2035年度には1兆円まで拡大させたい考えだ。そのために強化すべき施策として、ソフトウェア開発を中心としたリソースの大幅増強、アーキテクチャ/プラットフォームの業界標準化、ハードウェア技術における強みの構築、ADAS(先進運転支援システム)領域での戦略パートナー確保を挙げた。「ADASや自動運転技術が進化していけば、それらのシステムから得られる情報をコックピット側で出していく必要がある。そのために適切なパートナーを見極めていきたい」(永易氏)。
車内空間については、ディスプレイオーディオやIVIなどの個別機能の価値から、空間全体として快適さを満たす空間価値が求められるようになっていくと想定している。そして、これまでパナソニックグループ傘下で培ってきた、くらしと人に寄り添ったノウハウ/技術により、センシングとアクチュエーションを「ひと理解ロジック」によってつなげ、一人一人に合わせた移動体験価値を創造する「キャビンUX」を具現化していく。キャビンUXでは、既に自動車メーカーとの共創をスタートしており、展示会でのコンセプト訴求を通してモビリティサービサーからの引き合いも得ているという。車内空間と関わる事業の売上高はコックピット領域と同程度だが、将来的な目標については「より具体化する中で決めていきたい」(永易氏)としている。
なお、PASは、経営体制への移行に合わせて企業ビジョンを新たに『世界一の「移ごこちデザイン』カンパニー」に変更した。誰もが心地よく移動できることを目指して、6つの移ごこちのデザインを目指していくという。
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