レーザー技術生かして半導体分野進出目指すアマダ、共創施設の活用も拡大:工作機械(2/2 ページ)
アマダは、ユーザーとの共創施設「AMADA Global Innovation Center」(AGIC)で事業戦略に関する記者会見を開催した。
溶接に関する高いニーズ、自動車/大手メーカーの依頼も
AGICは最新の機械やソフトウェア、検査機器などをそろえた「Innovation LABO」や、90種超の最新機械を展示する「Innovation SITE」、ソフトウェアやIoT(モノのインターネット)機器など稼働保障に関するソリューションを紹介する「Engineering FIELD」などがあり、新素材や新加工技術への対応、自動化/生産性の向上を提案している。
開設から2年が経過し、既に約8300社、約1万8000人が来場した。「海外からの来場も多い。大学や学会、官公庁など多くのステークホルダーに来場いただき、金属加工の明日を共創する空間として、順調に稼働している」(山梨氏)。
来場から契約に至った契約ヒット率は、コロナ禍前の売り上げピークだった2018年度(前施設)と比較して31%から44%へと13%上がり、契約単価は3700万円から5700万円へと54%上昇した。一方で、年間の運営経費は9%低減した。「AGIC開設の狙いの1つとして、アップセル、クロスセルによる契約単価の増加を掲げており、狙い通りの効果が得られている」(山梨氏)。
特に、さまざまな業種のユーザーによるInnovation LABOの活用が進んでいる。Innovation LABOでは仕切りで覆われたユーザー専用のスペースを9部屋設けており、ユーザーが抱えている課題に対してアマダの技術スタッフが共に加工検証し、要求品質などを確認する。2024年度の依頼件数は前年度と比較して2.5倍になった。2025年度は前年度比1.5倍の依頼件数を目指している。自動車メーカー、大手メーカーの割合は2023年度の55%から2024年度は67%へと広がっている。
「従来の板金加工を中心とした加工課題の解決、工法改革といった既存ビジネス領域に加え、EV(電気自動車)などのe-Mobilityや半導体、金属積層造形、新素材への対応など新たなビジネス領域が拡大している」(山梨氏)
工程別の検証実績では、溶接および同社の3次元レーザー統合システム「ALCIS 1008e」を利用した検証が増加。ALCISを用いた検証はほぼ全てが溶接に関するもので、工程別では約80%が溶接に関する検証依頼になっている。利用企業の分類では大手企業/メーカーの割合が上がっている。1つの企業が6回利用した事例もあるという。
アマダ イノベーションセンター長の岸本和大氏は「溶接は板金工程の中で自動化率がまだ低く、ブランクや曲げといった前工程の影響を大きく受ける工程であるため、実際の製造現場においても課題が最も多い工程になっている」と話す。
工法改革を含む板金加工に関する検証がまだ55%を占めるが、e-Mobiliyや半導体、新素材、難加工材に関する検証も45%になっている。
EV用モーターの小型化、高トルク化、高効率化のニーズが高まっており、モーターは従来の丸線を使った巻き線方式から、平角線を用いて端部を溶接し、占積率を高めた平角線方式のモーターが主流になりつつある。平角線を使用したモーターには、1個当たり200点前後の溶接が必要になるという。そのため溶接スピードに加え、溶接時のスパナを抑制した加工が求められている。ALCIS 1008eは銅の溶接に最適なブルーレーザーを搭載しており、検証に活用されている。また、ブレーキディスクローターの表面に超硬系の金属粉末を積層造形することで、ブレーキの耐摩耗性を向上させ、微細粒子の発生を抑制する検証も行っている。
今後、さらなる需要拡大が見込まれる半導体分野の依頼もある。パワー半導体の製造におけるリードフレームの溶接に関する課題に対して、ブルーレーザーによる溶接で解決に取り組んでいる。また、金属と樹脂の異種材料接合では、レーザーで金属の表面にあらかじめ微細な凹凸を付けることで、それぞれの接合強度を上げる加工にも取り組んでいる。「アマダの持つ豊富なレーザーのラインアップや応用技術を用いて、ユーザーの課題解決に取り組んでいる」(岸本氏)。
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