歯車製造工程のCO2排出抑制、日立建機らが浸炭技術の有効性を実証:脱炭素
日立建機、日本テクノ、高圧ガス工業、DOWAサーモテックは、油圧ショベルの減速機に組み込む歯車の製造工程において、浸炭炉で発生する二酸化炭素の直接排出量をゼロにできる常圧スマート浸炭技術の有効性を実証した。
日立建機、日本テクノ、高圧ガス工業、DOWAサーモテックの4社は2025年5月8日、油圧ショベルの減速機に組み込む歯車の製造工程において、浸炭炉で発生するCO2直接排出量をゼロにできる「常圧スマート浸炭技術」の有効性を実証したと発表した。20トン(t)クラスの油圧ショベルの減速機に使う歯車で試験し、一般的なガス浸炭と同等の耐摩耗性や疲労強度の向上を実証した。
浸炭とは、約850〜950℃に加熱した低炭素の鋼材部品の表面に炭素を浸入させ、急冷処理することで表面を硬くする金属の熱処理技術。耐摩耗性や疲労強度を向上させて耐久性を高めることから、自動車や機械などの部品に広く適用されている。
ガス浸炭は一般的に、原料ガスのプロパン、メタン、ブタンなどの炭化水素系ガスと、大気から生成した一酸化炭素、水素、窒素といった変成ガスを使用するため、浸炭反応や排ガス燃焼反応によってCO2が浸炭炉から排出される。油圧ショベルの減速機などの機器製造工程におけるCO2排出量は、金属部品の熱処理工程が最も多くなり、特にガス浸炭は大きな割合を占めている。
日本テクノと高圧ガス工業が共同開発した技術は、アセチレンガスと窒素ガスの流量をアセチレンガス濃度分析器によって制御し、鋼材の表面に直接浸炭する。CO2の発生源となる変成ガスを用いないことから、CO2直接排出量はゼロとなる。浸炭炉1基当たり年間56tのCO2排出量を削減する見通しだ。
また、変成炉は一般的に24時間稼働し続けるため、その分の電気代やメンテナンス費などを抑えることもできる。既存の浸炭炉で使用できるため、新たな設備導入は不要。初期投資の低減も見込める。
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