環境に優しい乗り物は製造から脱炭素に、三菱重工のアプローチ:鉄道技術(3/3 ページ)
三菱重工業は次世代新交通システムの新ブランド「Prismo(プリズモ)」を開発したと発表し、受注活動を開始した。すでに海外から引き合いがあり、早ければ数年後には提供するとしている。
残るはスコープ1(燃料の使用や工業プロセスでの直接排出の温室効果ガス排出量)に該当する年間220トンのCO2排出で、プロパンガスやガソリン、軽油など燃料の使用に伴うものだ。設備の電化や燃料の転換、工程の工夫や新技術の実験的な導入などの対策を打つ。こうした取り組みで得たノウハウは全社に展開する。スコープ1の領域も省エネや合理化に数千万円規模を投資してきたが、「元を全てとった状態だ」(三菱重工 技術戦略室 ビジネスインテリジェンス&イノベーション部 主管 カーボンニュートラル推進室長の森原雅幸氏)
「今使っていない熱を賢く使う技術を実証する。工場の廃棄物を使ってメタンガスを作ってみたり、水素を使ってみたり、小口の溶接用の燃料を変えていける可能性がないか探っていく。また、電力を消費する小規模なデータセンターを設置し、太陽光発電が順調なタイミングで積極的にデータ処理を行ったり、蓄電池を活用して電力を賢く使ったりすることにも取り組む」(森原氏)
三原製作所は、脱炭素/低炭素化を実現する技術の集積、サプライヤーなど取引先とともに脱炭素に挑戦するための共創や、脱炭素の推進を事業の成長に結び付ける実践の場となる「カーボンニュートラルトランジションハブ」として取り組みを継続する。
脱炭素の「費用対効果」
三菱重工はカーボンニュートラルに「事業」として取り組む方針を掲げており、三原製作所での先行的なCO2排出削減でも費用対効果を重視した。
費用対効果の検証に当たってMAC(Marginal Abatement Cost)カーブを制作した。縦軸がCO2削減の単価、横軸がCO2削減量となるグラフだ。費用対効果の高い対策ほど背が低く幅の広い棒グラフになる。単価が安く、CO2削減効果が大きいものから優先的に取り組むことに決めた結果、費用対効果が圧倒的に高い太陽光発電の導入からスタートした。
三原製作所でのMACカーブ作成の取り組みは、工場のCO2排出削減を他の拠点に展開する上で効率的に投資するための指針にもなる。MACカーブを下げ(=投資を抑え)ながらCO2削減効果も追求するための技術も、ビジネスにつなげたい考えだ。
MACカーブの作成には、工場内の1つ1つの設備を対象にCO2排出をつぶさに把握する作業と、その排出量を削減するための手法や設備、技術の探索やエンジニアリングが求められる。「そういった裏側にわれわれでなければ作れないネタがあってMACカーブができている。われわれの知見が詰まったMACカーブを使ってもらえれば、今までできなかった試算になる可能性があるのではないか。三菱重工の製品を使ってもらうきっかけにもなるかもしれない」(森原氏)
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