環境に優しい乗り物は製造から脱炭素に、三菱重工のアプローチ:鉄道技術(2/3 ページ)
三菱重工業は次世代新交通システムの新ブランド「Prismo(プリズモ)」を開発したと発表し、受注活動を開始した。すでに海外から引き合いがあり、早ければ数年後には提供するとしている。
ハイブリッドスーパーキャパシタを応用
プリズモに搭載するMHPBの開発に携わる武蔵エナジーソリューションズは「ハイブリッドスーパーキャパシタ」を手掛ける。これは電気二重層キャパシタの原理をベースに、リチウムイオンを吸蔵可能な炭素系材料を負極に使用し、リチウムイオンを添加してエネルギー密度を高めた蓄電器だ。
MHPBに搭載する蓄電デバイスは、ハイブリッドスーパーキャパシタよりも高い容量密度を実現しながらハイブリッドスーパーキャパシタと同等の長寿命と安全性も確保する。これにより、鉄道車両のブレーキ時に発生する大電力の吸収や走行電力の出力に最適な出力密度や容量密度を持たせる。三菱電機は、この蓄電デバイスに対して耐振動性や絶縁、防水など鉄道車両への搭載に必要な性能を持たせ、MHPBを完成させる。MHPBは2026年度の販売開始を目指す。生産は三菱電機 伊丹製作所(兵庫県尼崎市)で行う。
リチウムイオン電池をAGTに搭載するのは、バッテリー自体の重量や安全性の承認などがネックになる。MHPBはリチウムイオン電池と比べて小型軽量にできる上、安全面でも搭載しやすかった。
給電レールレスやセンターガイド方式の採用によってメンテナンスの負担を軽減するだけでなく、デジタルイノベーションプラットフォーム「ΣSynX(シグマシンクス)」による運用保守情報の統合マネジメントも提供する。リアルタイムな遠隔監視で車両のセンサーからデータを収集し、クラウドで分析、共有する。メンテナンスの省力化に加えて、稼働率向上も狙う。
国内外の交通事業者にとってメンテナンスの人件費や人手不足が課題になっていることをにらみ、アフターサービスまで三菱重工として提供し、事業として伸ばしていく考えだ。
三原製作所は脱炭素のロールモデル
プリズモの車両を製造する三菱重工 三原製作所では、出力12MW、発電量20.2GWhの「三菱和田沖太陽光発電所」が敷地内で2024年3月から稼働している。同発電所の敷地面積は14万3815m2。パネルの総面積は7万8761m2で、パネルの枚数にして2万8176枚となる。三原製作所での生産品目見直しと、カーボンニュートラル達成に向けた取り組みのタイミングが重なり、古い建屋があった敷地を発電所として活用することとなった。
太陽光パネルは中国電力が設置し、三菱重工が電気料金を支払うPPA(Power Purchase Agreement)で導入した。CO2排出は電力由来が大半だった三原製作所では、三菱和田沖太陽光発電所の稼働によってCO2排出量は97.5%減となり、スコープ2(他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出量)に該当する年間8640トンを削減した。
三原製作所は、三菱重工の中で工場のCO2排出削減をリアルに進めるロールモデルの役割を担う。三菱重工はカーボンニュートラル推進の専任組織となるカーボンニュートラル推進室を2022年6月に設立し、2024年度末までの3年間で三原製作所のCO2排出状況と対策の見える化を進め、具体的な対策の導入に取り組んできた。三菱和田沖太陽光発電所の開設はその一環だ。
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