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インタビュー

オムロン社長に聞く、米国関税政策やコグニザントとの提携FAインタビュー(2/2 ページ)

オムロン社長の辻永順太氏やインダストリアルオートメーションビジネスカンパニーのカンパニー社長である山西基裕氏に市場の展望や米国のITサービス企業コグニザントとの提携への期待などを聞いた。

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インダストリー4.0実現に向け「機が熟した」

―― 今回の提携発表で、インダストリー4.0実現に向け「機が熟した」と語っていました。何をもってそういえるのでしょうか。

山西氏 当社が提供できる「価値」がそろい、そして今回、コグニザントという考え得るベストのパートナーが見つかったという2点が挙げられる。

インダストリアルオートメーションビジネスカンパニーのカンパニー社長である山西基裕氏
オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニーのカンパニー社長である山西基裕氏

 提供できる「価値」とは、まず、自社だけでなく他社の機器も含めて現場のデータを吸い上げられる機器群がそろったことだ。当社は以前からそうした機器を開発してきた。生産現場の既存の設備/機器は当社以外も含めて無数にあるが、それらを含めてデータを取り込める機器のラインアップがそろった。

 ただ、データを収集するだけでは、従来とそれほど変わらない。今回、「バーチャルコントロールプラットフォーム(以下、VCP)」によって、現場の課題や変化に対応可能な、価値ある形でデータをそろえられるようになった。VCPはもともとIT側で使っていた技術をOT側に持ち込むものだが、これには大きなハードルがあった。今回コグニザントの知見とオムロンがこれまで培ってきた知見をミックスさせることで開発を実現した。

 生産現場のDX化によるインダストリー4.0実現のためには、さらに、経営側が意思決定できる形でそのデータを経営層に上げる必要がある。意思決定に対し、最適に生産現場が連動できるよう、現場と経営層をつなぐことを実現できなければ、本質的なインダストリー4.0は達成できない。それが実現可能なベストのパートナーであるコグニザントと今回提携したことで、全てのピースがそろったので、「機が熟した」といえる。

―― 今後、さらなる発展に必要なものは?

辻永氏 製造業は大手から中小、数人で運営しているような規模の企業までざまざまあるが、そういった中小企業が今回のわれわれの提案を受け入れるかといえば、まだそのレベルではないだろう。

 今回の提携によるソリューションは大手企業をメインターゲットとしていて「これまでも進化を進めてきたが、これ以上は改善が難しい。これからはデジタル化してAIを入れ、さらなる改善を進めたい」といったビジョンがある企業に対しては、そのニーズに応えられる。

 しかし、中小企業まで全てをカバーするように受け止められるには、まだもう少し時間がかかるだろう。われわれのソリューション自身がその投資力に見合うものに変化するのか、もしくは中小企業が、生き残るためにそうした大きな投資も必要となる世の中が来るか、そういった変化があればより裾野は広がると思う。

 今回はまず、大手企業を最優先に攻めていく方針であり、大企業のニーズに応えられるものはできたと認識している。

山西氏 大手顧客のニーズで、最近特に多いのは、1000分の1秒や100万分の1秒で稼働する機器を遠隔地からでもあたかも目の前にあるように再現し、その機器の課題を特定可能にする、デジタルツイン構築だ。これは熟練労働者不足などが背景にある。

 ただ、100万分の1秒の制御をリアルに再現するには、かなり高度なデジタルツイン技術が必要になる。そこに関しては、当社はNVIDIAと共にデジタルツインを開発していて、「NVIDIA Omniverse」と当社の高速高精度のコントローラーを掛け合わせることで、リアルな実装値を目の前に再現できる。コグニザントとの提携によって、これを最後に顧客のソリューション、顧客がやりたいことに落とし込んでいく中で発生してくる、当社としては少し技術を早急に進化させなければならない部分を、コグニザントと共同で開発する。

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